自己紹介

はじめまして。TELSTAR新メンバーの安藤晴也(あんどう・はるや)です。大学で物理学を勉強しています。好きな物はSF小説。宇宙を舞台にした物もそうでない物も大好物です。
ずっと団体やイベントに参加せずに野良宇宙ファンをやってきましたが、何か自分から宇宙に関わる活動をしてみたいと思いTELSTARに参加しました。TELSTARとしての活動を通じて、自分がこれまで感じてきた宇宙の魅力を読者のみなさんに発信することが出来たら幸いです。

冥王星はなぜ惑星ではなくなったの?

探査機ニューホライズンズが撮影した冥王星
探査機ニューホライズンズが撮影した冥王星©NASA

かつては太陽系の第9惑星として知られた準惑星・冥王星。昨年にはNASAの探査機ニューホライズンズが訪れるなど今なお話題に事欠かない星です。
ところで2016年は冥王星の分類が惑星から準惑星に変更されてから10年目に当たります。普段天文学に馴染みのない人々からも注目された冥王星の分類変更。冥王星はいったいなぜ惑星ではいられなくなったのか、振り返ってみましょう。

奇妙な惑星・冥王星

冥王星は1930年にアメリカの天文学者トンボーによって発見されました。当初はすんなりと惑星の座に収まりますが、次第に奇妙な天体であることが明らかになっていきます。
まず、軌道が大きく傾いていること。冥王星以外の惑星はほぼ同じ平面(黄道面)の上を公転していますが、冥王星の軌道はこの面に対して傾いています。
次に、軌道が楕円形であること。冥王星以外の惑星はほぼ真円形の軌道で公転していますが、冥王星は細長い楕円形の軌道で公転しています。この軌道のため、冥王星は定期的に海王星の軌道よりも内側に入り込むことが知られています。
そして、他の惑星に比べてとても小さいこと。当初は地球に匹敵する大きさの星であると考えられていましたが、後に直径は地球の5分の1ほど、質量に至っては地球の0.2%ほどの、とても小さな天体であることが分かりました。
これらの奇妙な性質のため、冥王星は実際に分類が変更されるかなり前から他の惑星とは異なる種類の天体であると考えられていました。

冥王星の仲間が見つかる

1990年代に入ると、次々と海王星の外側を回る天体(太陽系外縁天体)が発見されるようになりました。最初に発見された1992QB1(注1)こそ冥王星より遥かに小さいものでしたが、やがてクワオワーやセドナなど冥王星に匹敵する大きさのものが発見されるようになります。これらの天体の発見により、冥王星だけを特別視する根拠は次第に薄くなっていきました。
そして2005年、カルフォルニア工科大学のマイク・ブラウンらによって冥王星とほぼ同じ大きさを持つ太陽系外縁天体・エリス(注2)が発見されます。エリスの登場によって、天文学者たちはいよいよどの天体を惑星に含め、どの天体を含めないかを考え直す必要に迫られました。

注1)歴史的な天体ですが今も名前が付けられておらず、仮符号で呼ばれています。
注2)「エリス」という名前が付けられたのは惑星の定義が見直された後のことで、この頃は仮符号の「2003UB313」または「ゼナ」というあだ名で呼ばれていました。

惑星の定義見直しへ

国際天文学連合(IAU)の最初の提案は、惑星の幅を広げるものでした。
小惑星が歪な形であることが多いのに、地球や木星などの惑星は丸い形をしています。これは惑星が大きな重力によって自分自身を平らに均しているためです。
IAUは最初、これを逆手にとって「自分の重力で自分を球形に保つことができるだけの質量を持った、太陽の周りを回る衛星でない天体」を惑星と呼ぶことを提案しました。IAUの考えでは冥王星を含めたそれまでの9個の惑星とエリス、冥王星の衛星カロン(注3)、火星と木星の間にある小惑星ケレスの12天体がこれに含まれることになります。
しかし最終的にIAUは方針を180度転換し、惑星の幅を狭める提案をしました。上記の定義に「自分の軌道を占有していること」という条件を付け加えたのです。この定義に従うと、近くの軌道にたくさんの太陽系外縁天体が見つかっている冥王星は惑星から除外されてしまいます。

注3)カロンは冥王星の衛星ですが、直径が冥王星の約半分と大きかったため、この定義では冥王星との二重惑星と見なされました。

天体の新しい分類が決まる

結局、この冥王星を惑星から除外する案は、2006年8月にチェコのプラハで行われたIAU総会において若干の修正を加えられた上で議決されました。最終的な惑星の定義は次のようなものです。

1)太陽の周りを回っていること。
2)自分の重力で球形を保っていること。
3)付近の軌道から他の天体を一掃していること。

この定義には水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星が当てはまります。
また、新たなカテゴリーとして上記の定義のうち3)を満たしていないながらも衛星ではない天体「準惑星」が作られました。現在、準惑星にはケレスと太陽系外縁天体の冥王星、エリス、ハウメア、マケマケの5つの天体が分類されています。
このようにして冥王星は惑星から準惑星に分類変更されました。76年にもわたって太陽系の第9惑星として親しまれてきた星の「降格」は一般市民からも大きな反響を呼びました。

探査機ドーンによって撮影された準惑星ケレス
探査機ドーンによって撮影された準惑星ケレス©NASA

真の第9惑星?

冥王星は惑星から除外されてしまいましたが、冥王星とは異なる「真の第9惑星」の存在を予測する天文学者もいます。
今年1月にカルフォルニア工科大学のマイク・ブラウンとコンスタンティン・バティギンによってその存在が予言され話題となった「プラネット・ナイン」もそのひとつです。プラネット・ナインは海王星の遥かに外側を極端な楕円軌道で巡る、地球の2倍から4倍ほどの大きさの天体と考えられています。
「真の第9惑星」の存在はまだまだ仮説の域を出ませんが、もしかしたらまた太陽系の惑星が9つになる日が来るかもしれませんね。

参考文献
マイク・ブラウン(2012)『冥王星を殺したのは私です』飛鳥新社
半田利弘(2011)『基礎からわかる天文学』誠文堂新光社
国立天文台・広報室(2006)『惑星定義に関する経緯と解説』 http://www.nao.ac.jp/nao_topics/data/000234.html
NASA http://www.nasa.gov(2016年6月5日アクセス)
JAXA宇宙情報センター http://spaceinfo.jaxa.jp(2016年6月5日アクセス)