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宇宙食について その4:宇宙食の優等生って?

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栄養価の高い食品として注目されている食品を列挙すると、まず「いちじく」が挙がります。生のいちじくは85パーセントが水分で、ビタミン、ミネラル、食物繊維をバランス良く含みます。乾燥いちじくは、成分が濃縮されるため、カリウム・食物繊維・銅を特に多く含む健康的なドライフルーツです。

 

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栄養価の高いドライいちじく

© Ishikawa Hirochin

 

 また、ネイティブ・アメリカンの常食である「ピーカンナッツ」も宇宙食の優等生でしょう。クルミ科でスチュアート、ディザイアブル、シュライなど50を越える種類があり、種子の中の胚乳をローストして食べます。生食は稀です。非常に脂肪分が高く「バターの木」とも呼ばれ、脂質以外にタンパク質、マグネシウム、鉄、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、食物繊維、カリウム、ナトリウム、リン、βカロテン、ナイアシン、オレイン酸などを含み、非常に栄養価が高い食品となっています。ビタミンB1、B2の作用で自らの脂質の代謝を行うほか、カリウムでむくみを予防し、鉄分で貧血対策、オレイン酸でコレステロールを調整し、動脈硬化などの心疾患を予防します。主にアポロ計画において、フレッシュフードとして宇宙へ持ち込まれました。

 

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アポロにも持ち込まれたピーカンナッツ

© アメリカ大使館農作物貿易事務所

 

 変わり種として、「クロレラ」も優秀な食品として挙げられます。水中に棲息するクロレラを乾燥させて粒状にしたのが一般的なクロレラ製品です。クロレラにはタンパク質が約60%も含まれており、大豆や牛肉の数値と比べるとかなり優秀です。また、アミノ酸、ビタミン、鉄分、カルシウム、葉緑素、食物繊維を高濃度に含有しています。「アルカリ性食品の王様」としても知られるクロレラは、酸性体質を弱アルカリ性体質に変える働きによって生活習慣病を予防します。加えて、クロレラ成長因子CGFという生理活性物質が含まれ、生物の成長を促し細胞の新陳代謝を高めて若返らせる作用があると考えられています。さらには、重金属や化学物質を除去する解毒作用もあります。これらの点から、NASAで宇宙食として研究されていました。

 

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NASAが次世代宇宙食として注目するクロレラ

© 八重山殖産株式会社

 

 もっと先の未来に、人類が宇宙へ進出する時の宇宙食も考えてみましょう。ここで注目すべき食品に、「完全食」というものあります。完全食とは、それを摂取するだけで人間に必要な栄養素を満たせる食品のことです。この完全食には、「玄米」や「卵」が挙げられます。ただ、宇宙進出した人類の胃袋を支えるであろう最有力候補の食べ物は「さつまいも」と言われています。さつまいもにはタンパク質や脂肪が不足するため準完全食に該当し、それらは肉や魚などで補う必要がありますが、江戸時代に多くの人を飢饉から救ったさつまいもは宇宙での農作物として非常に優れた利点を持っています。まず環境への適応力が強く、土がなくとも水耕栽培が可能で、葉も茎も食べられるため廃棄処理が少なくて済みます。カロリーは100gあたり約123kcal。カルシウム、カリウム、食物繊維、ビタミンB群など非常に豊富な栄養素を兼ね備えています。特にビタミンCはイモ類の中での最も多く含まれており、ビタミンEも玄米の2倍含まれています。また、さつまいもを切ったときに出てくる白い液にはヤラピンという成分が含まれており、これは胃の粘膜を保護し、腸の蠕動運動を促進します。さらに食物繊維も豊富なため、便秘にも有効です。NASAは宇宙での自給自足の足がかりとして、宇宙環境に適した早期肥大性のさつまいもとその加工品の開発を進めています。

 

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宇宙で栽培可能になるかもしれないさつまいも

© J◇サプリ

 

 もうひとつの未来の宇宙食としては、かつてメキシコ中央高原に栄えたアステカ帝国で食用にされていた「スピルリナ」が挙げられます。スピルリナのタンパク質含有量は60~70%。必須アミノ酸を全て含んでおり、アミノ酸組成はクロレラを上回っています。ビタミンやミネラルが豊富で、特にβ-カロテン、ビタミンB12の含有量は非常に優れています。必須脂肪酸のγ―リノレン酸、葉緑素、核酸、酵素、食物繊維なども豊富に含み、世界で最も完璧な食品とも言える栄養バランスを誇ります。しかも、スピルリナは細胞壁が薄くて壊れやすいために消化率は95%以上で、クロレラに比べて有効成分の利用効率が非常に高いです。国連はスピルリナを未来の最も理想的な食糧資源として推奨しており、NASAもスピルリナを宇宙未来食として採用し、将来的に宇宙で栽培する事を検討しています。

 

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NASAが宇宙で栽培できる宇宙食として注目しているスピルリナ

© ホワイトナイト株式会社

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