宇宙のお掃除屋さん アストロスケール:第二弾

第一弾では、アストロスケール とは?をテーマにしてお送りしました。
今回はアストロスケール で働く社員さんに焦点を当ててインタビュー!

今までどのようなキャリアを積んでこられたのか。
宇宙との出会いのきっかけは…?

20180326_180403_0015野口さん(左) 田口さん(右)

 

ー 田口さんへのインタビュー

宇宙を好きになったきっかけとは??

小さい頃からスター・ウォーズやガンダムの影響で宇宙は好きでした。宇宙について真剣に勉強することを決めたのは高校生の頃ですね。ハッブル望遠鏡に関する本を読んでいて、ただ写真を楽しむだけでなく、写っている天体の正体を知りたいと思うようになりました。そこで大学で天文学を学ぶことに決めました。大学院進学後、ヒューストンで宇宙飛行士の野口さんとお話する機会がありました。それからは、ただの憧れだった宇宙飛行士が具体的な目標になり、宇宙飛行士と関わる仕事をしたいと思うようになりました。

紆余曲折があり、宇宙飛行士や地上の管制官のインストラクターの仕事をすることになりましたが、仕事をしていくにつれて、民間で動きのある仕事をしたいと思うようになりました。人前で喋ることや物の魅力を人に伝えることが好きだったこと、事業内容の独創性に共感できたことなどから、アストロスケールに入り宇宙に関わりながら営業の仕事をすることになりました。

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資料提供:NASA

高校生たちへのメッセージ

今やいくつもの民間企業が宇宙分野に参入しています。宇宙といえば、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が連想されるかもしれませんが、決してJAXAだけが選択肢ではありません。また宇宙関係の仕事をするということは、必ずしも技術者である必要はありません。会計や法律、広報、人事部門など様々な役割があります。

今やっていることが宇宙と関係ないと思っていても、一生懸命取り組めば自身の糧となり、人間として成長できます。そして思い続ければ、宇宙の仕事に携わることはできます。ご参考に、私は大学院を卒業してから、8年かかって宇宙業界に舞い戻りました。少しでも宇宙に興味があれば、是非チャレンジし続けて欲しいです。

 

ー 野口さんへのインタビュー

宇宙とのきっかけはどのようなものでしたか?

今でこそ、思い返すと出身地の夜空が綺麗であったことや、お気に入りのクリアファイルが宇宙に関するものでしたが、私はもともと宇宙とはほとんど縁のないキャリアを歩んで来ました。いわゆる宇宙が大好きなタイプではありませんでした。そんな私が宇宙と関わることになったきっかけは、アストロスケールに入社してからです。

どのような きっかけでアストロスケール で働くことになったのでしょうか?

もともとアストロスケールとの繋がりは全くありませんでした。会社の面接に挑んだら面接のときに岡田CEOが話す想いや事業内容に感銘を受けたことを覚えています。社長自らが熱心に応答してくれたことが印象的でした。事業内容が面白いと思ったことや、日本語と英語でよりレベルの高い広報を行いたいと思っていたのですが、それが実現できるのがアストロスケールであると感じました。

人のインフラに携わる

アストロスケール に入る前には、人のインフラに携わることを軸に、様々な仕事をしてきました。証券会社のバックオフィスのエンジニアをしたり、途上国の貧困削減のためのプロジェクトを遂行したり。仕事をする中で、コンサルタント等の道に進むか迷ったこともありましたが、大学の専攻がコミュニケーション学だったことや、好きなことを突き詰めたところ「広報」の道にに行き着きました。広報の立場から、弊社の取り組みをより分かりやすい言葉で伝えたり、社会が良くなる仕組みに貢献していきたいと考えています。

Noguchi_picミャンマー訪問

高校生たちへのメッセージ

自身の可能性を狭めずに色々な視点からとらえてみて欲しいです。文系や理系といったバックグラウンドに必要以上に囚われず、自分自身で「これだ!」というものを極めていって欲しいです。結果、それが武器になれば私のように宇宙業界へ参入も十分に可能だと思います。諦めずに是非チャレンジしてほしいです!

編集後記

アストロスケールさんに取材をするために、大阪から東京にやってきました。宇宙ベンチャー企業に取材に行くのは初めてで、取材前は緊張しましたが、田口さんと野口さんの和やかな話のかけ合いで緊張もやわらぎ、大変楽しい時間でした。今後宇宙が更なる発展を遂げていく中、アストロスケールさんの益々の活躍に目が離せないですね! Y.A

取材を通して、野口さん田口さんの宇宙に対する思いや、アストロスケールさんについて語る姿を見て勇気が湧きました。お二方ともさまざまな経緯を経て今のお仕事をされているようでしたが、本当に今の仕事が好きなのだと感じました!H.M

 

宇宙のお掃除屋さん アストロスケール:第一弾

今や、私たちが見上げる空の向こうに広がる宇宙空間には無数のゴミが漂っている。使わなくなったロケット、人工衛星、その数は実に、10㎝以上の物体で2万個以上に及ぶとされている。アストロスケールは宇宙のお掃除屋さんとして世界で唯一、この宇宙ゴミの除去を主事業として扱っている会社である。今回はその実態に迫る。

1957 vs 2018_space debris

 

アストロスケール とは?

アストロスケール は、宇宙機の安全航行の確保を目指し、持続可能な宇宙環境の為に宇宙ゴミ問題に取り組む会社です。壮大なミッションとして掲げているのは“宇宙ゴミの除去”。民間企業ならではのスピード感と技術によって宇宙業界に旋風を巻き起こすべく、果敢に挑戦している企業です。
アストロスケールはシンガポールに本社を置くほか、日本やイギリスにも支社を構えています。シンガポールには宇宙企業のアジア統括拠点が多く存在し、人や情報が集まりやすい環境だそう。

astroscale logo(black)

どのような特徴のある会社でしょうか?

良いところだと思うのは、私たちの会社は様々な世代の人がいることです。ベンチャー企業というと一般的に創業者と考え方の近い人や、共感しやすい同年代か、または若い人を呼びこむ傾向にあると思います。しかし、下は20代〜上は70代と幅広いです。そのような環境でも、分け隔てなく互いにコミュニケーションできる距離感でいます。もちろん職位はあるのですが、上下関係は全く意識していません。とてもフラットな組織です。また先ほど冒頭で紹介したように、海外にも支部があるため、離れているチームと連携をするためにほぼ毎日ビデオ通話でコミュニケーションをとっています。

現在、アストロスケールが挑戦していることとは?

 人工衛星は運用を終了すると、そのまま浮遊し宇宙ゴミになってしまいます。そこで現在は、運用を終了してしまった50〜数百kg級の大きな人工衛星を捕獲する「ELSA-d」の開発を行っています。ELSA-d_mockup(actual size)

「ELSA-d」

 「ELSA-d」は運用が終了した人工衛星を捕獲し、大気圏に突入させることを目標としています。最初は「ELSA-d」に搭載されている捕獲機と目印となる機械を使用して捕獲実証を行います。次に、目印を人工衛星に予め取り付けて捕獲を試みます。将来的には目印なしでも宇宙ゴミの捕獲を実現したいと考えています。
今後、ロケットや衛星のコスト低下に伴い、ロケットの打ち上げ機会が増加することが予測されます。ますます運用が終了した衛星の捕獲・除去は重要になってくるでしょう。

いかがでしたでしょうか?
次回では実際にアストロスケール では働く社員さんにインタビュー!
次回もお楽しみに!

【宇宙高校生】第1歩:もしも君が

第1歩:もしも君が

もしも、私が宇宙で活躍する「宇宙飛行士」だったなら
もしも、私がロケットや人工衛星を作る「エンジニア」だったなら
もしも、私が月での暮らしを考える「建築家」だったなら
もしも、私が宇宙の謎を解き明かす「天文学者」だったなら

将来、自分が何になりたいか、何をしたいか
明確にはっきりと決まっている人はそれほど多くありません。
いろんな「もしも、」とその先を考え、
たくさん悩んで、悩んでやっと自分の進路を決めます。

この「もしも、」を一つでも体験できたら?
自分が本当にやりたいことが見つかるかも。

MoshiTen2017
https://www.astr.tohoku.ac.jp/MosiTen

2017年12月23日から29日の1週間。
高校生向けに東北大学・宮城教育大学・仙台市天文台が共同で開催している
合宿形式の天文学者体験講座が行われました。

「もしも君が杜の都で天文学者になったなら」
通称:「もし天」

もしもの将来を体験できるこのイベントに密着取材しました。
16人の高校生たちが1週間で天文学者になっていく様子と
その内容について全4回の連載でご説明します!

大学生が作るロケットエンジン

初めまして!今年の秋から新メンバーとなりました、大学三年生の蜂谷友理です。現在は福岡県にある九州大学に通っていて、大学内のサークルで「ハイブリッドロケット」というロケットを作っています。まず、ハイブリッドロケットって何?については、こちらの記事を読んでみてください!今回は、私たちのチームが大学で製作しているハイブリッドロケットと、そのエンジンについてお話しします。

ハイブリッドロケット1

<ハイブリッドロケットで宇宙を目指す>
ハイブリッドロケットの魅力は、なんといっても構造がシンプルで費用が安いこと。近年の宇宙開発では、人工衛星の小型化・低コスト化が進み、それを打ち上げるロケットもより安く打ち上げられることが求められています。そうした需要にぴったりなハイブリッドロケットは、次世代の宇宙輸送機として大変注目を集めているのです。
こうした背景から、私たちのチームは将来宇宙へ到達するハイブリッドロケットを作ることを目標に活動しています!

<ハイブリッドロケットの高度>
ところで、「宇宙空間」とはどれくらいの高さからなのか、皆さんはご存じですか?下の図にあるように、高度約10kmが旅客機の飛行高度で、高度約100km以上のことを宇宙空間と呼びます。つまり私たちは、ハイブリッドロケットで高度100km以上の「宇宙空間」への打ち上げを目指しているのです!

大気層の図

図1: 大気の層の説明

<ロケットエンジンを自分たちで作る!>
では、高度100km到達のために私たちがすべきこととは・・・
それは、「ハイブリッドロケットエンジンを自分たちで作ること」です!
現在多くの大学生チームがハイブリッドロケットを製作していますが、エンジンを自作しているチームはほとんどなく、既成品を使用しています。しかし既成品のエンジンの性能には限界があり、さらに高い高度を目指すためには到底足りません。
そのため私たちは、より高性能なエンジンを自分たち自身で開発しています。そうはいってもエンジンの開発はとても難しく、エンジンを実際にロケットに載せるまでには長い道のりがあります。例えば、エンジンができたら必ず「燃焼試験」と呼ばれる、エンジンだけを燃やす試験を何度も重ねて、性能のチェックをするのです。写真は、私たちのチームが初めて作ったエンジンの燃焼試験の様子です。現場で見ると、かなりの迫力です!燃焼試験の動画は、記事末尾にある動画よりご覧いただけます。

エンジン燃焼の様子

図2:燃焼試験の様子

ロケットの開発は、完成までの道のりこそ大変なことばかりですが、自分たちで作り上げたロケットを打ち上げるその瞬間には、それを上回るほどの感動がこみ上げてきます。
仲間とハイブリッドロケットだけでなく、ロケットエンジンも製作し、そして宇宙を本気で目指せることは、一生に残るかけがえのない経験です。こうした経験を通して、ますますロケットのことが好きになるはず!

さらに興味をお持ちになった方は、以下のHPものぞいてみてくださいね。私たちの活動を通して、皆さんの宇宙への夢がもっと膨らみますように!

九州大学PLANET-QのHP https://planet-q.jimdo.com/
九州大学PLANET-QのYoutube https://www.youtube.com/user/KUPLANETQ

ispaceがルクセンブルク政府と連携、月面探査が活発に

日本の民間宇宙企業ispaceが、ルクセンブルクの「SpaceResources.lu」計画に参加することを発表しました。宇宙資源開発の分野で外国政府と連携するのは日本で初めてのことです。

ispaceは”宇宙を人類の生活圏にする”というビジョンを掲げています。月にある水や月面を覆うレゴリスという砂などの調査を行い、月資源の活用を目指しています。現在は主に、月面探査車(ローバー)の開発に取り組んでいて、月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」に出場中の日本チーム「HAKUTO」の運営も行っています。

「SpaceResources.lu」計画は、ルクセンブルク政府による、宇宙資源を商業に利用するための支援計画です。ルクセンブルク科学技術研究所(LIST)が中心となり、諸外国と連携して月や小惑星などにある宇宙資源の開発を行っています。今回の発表によると、LISTが開発した、物質を特定しその質量も測ることができる質量分析計を、ispaceが開発するローバーに搭載します。月にある水の分布をマッピングしたり、レゴリスの成分を測定したりすることが目的です。

では、月の資源はどのように利用されるのでしょうか?例えば、水を水素と酸素に分解することで、月面から打ち上げるロケットの燃料に利用できます。また、レゴリスは焼き固めることで、レンガやガラスとして月面基地の資材に利用できます。他にも鉄やアルミニウムといった鉱物があり、月での利用はもちろん、地球に届けて使うことも考えられます。

ispaceとルクセンブルクのように国際的な協力や技術の進歩によって、月面開発は急速に進んでいます。月に採掘場やロケットの発射台ができ、宇宙船が地球と月を行き来する時代は近いかもしれません。そんな時代を目指すispaceの活躍に期待です。
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アポロ11号から見た、地球が月の水平線から昇る瞬間
Image Credit:NASA

凍りづけから動物を守るタンパク質
~ISS「きぼう」における氷の結晶成長実験~

2013年11月から約半年間、ISSの「きぼう」船内実験室において、JAXAと北海道大学は宇宙の微重力環境で氷の結晶がどのように成長するかを観察する実験を行いました。この実験によって、寒冷環境に住む動物体内の水が凍らないしくみが明らかになろうとしています。

結晶成長
図1 左から右へと氷の結晶が成長していく様子。氷の結晶が成長していく過程は非常に複雑で、それゆえに世にも美しい形状を作り上げることが知られている。Image Credit: JAXA

 氷点下の環境に住む魚が凍結せずに生きられるしくみの謎を解き明かすためには、”不凍糖タンパク質”と呼ばれるタンパク質が大きな鍵を握っています。今回の実験から、不凍糖タンパク質を含んだ水はある特定の方向に対して純水の3~5倍の速さで結晶が成長することが分かりました。「結晶の成長を速くする」と聞くと一見、水の凍結を促進しているように思えるかもしれません。しかし、ある一点に向かう方向に結晶成長を押し進めることで氷の結晶を小さく収め、結果的に凍結を抑制しているのです。

結晶成長 模式図
図2 不凍糖タンパク質を含む水中で氷の結晶が成長する速さを表した図。矢印の方向が異なる3種類の面は成長する速度がそれぞれ異なり、不凍糖タンパク質の作用で氷の結晶が小さく収まるように調整される。Image Credit: JAXA

 今回のような実験を地上ではなく、あえて宇宙で行うことには大きな理由があります。氷の結晶が成長するのを観察するにあたって、外部からの刺激は天敵です。特に問題となる「対流」は熱を伝えるために起こる流体の流れであり、地上の重力が原因で起こる現象です。このような理由から、微重力下で実験を行うことで、より精密な結果を得られるのです。
 今後、凍結を防ぐ働きを持つタンパク質のメカニズムが解明されることによって様々な分野への活用が期待されています。まず、寒冷環境に住む動物がいかに寒さに負けず生き残るか、その戦略を解明するための第一歩となります。また、食品分野や医療分野においても、冷凍食品の品質や臓器移植における臓器などの保存に利用できると考えられています。
 宇宙から私たちの生活へ。遠い存在に思える宇宙が身近に感じられる仕事の一例として、これからいっそう注目が集まるトピックとなるでしょう。

ジオスペース探査衛星「あらせ」、いよいよ観測開始!

「あらせ」定常運用へ移行

2016年12月20日に打ち上げられたジオスペース探査衛星「あらせ」が、軌道上で衛星システムの確認と、搭載していた九つの観測機器の立ち上げを完了したため、観測を開始しました。

「あらせ」の目的は、ジオスペースにあるヴァン・アレン帯と呼ばれる領域で高エネルギー粒子を観測することです。ジオスペースとは地球周辺の宇宙空間のことです。太陽が放出するプラズマの流れである太陽風の影響を、ダイレクトに受ける場所でもあります。その中でもエネルギーの高いイオンや電子が集まっている放射線帯を、発見者の名前をとってヴァン・アレン帯と呼びます。ヴァン・アレン帯についてはまだはっきりとわかっていない部分があり、「あらせ」はそれを明らかにするための衛星です。

何故ヴァン・アレン帯を調べるのかというと、宇宙天気予報に役立てるためです。宇宙天気は主に人工衛星に影響を与えます。例えばヴァン・アレン帯で太陽風が乱れると、高エネルギー粒子に囲まれた人工衛星は異常動作を起こすことがあります。人工衛星は天気予報や通信など、私たちの生活に欠かせないものとなっています。ヴァン・アレン帯の調査、高エネルギー粒子の変動メカニズムの解明は人工衛星の安全な運用につながり、私たちの生活に役立ちます。

ヴァン・アレン帯での調査における重要な課題の一つに放射線があります。「あらせ」は強い放射線に耐えつつ高精度の観測を行うために放射線耐性の高い部品や材料、放射線シールドの採用などの工夫をしています。

あらせによるヴァン・アレン帯の調査は、未来の人工衛星の安全な運用につながります。また、「あらせ」に搭載された九つの観測機器と放射線対策には、最先端の技術が詰め込まれており、ヴァン・アレン帯の調査だけでなく将来の宇宙開発にも大いに役立つことでしょう。あらせの今後に期待ですね。

金星探査機「あかつき」が発見した
巨大弓状模様の謎を解明

2015年12月に金星探査機「あかつき」が観測した弓状模様のメカニズムを、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの研究グループが解明しました。研究結果から、地形の影響による下層大気の乱れが上層大気の弓状模様を形成することが示されました。

「あかつき」が 南北方向に10,000kmを超える巨大な弓状模様をとらえたのは、一度失敗した金星の軌道投入に成功した直後のことでした。弓状模様は、スーパーローテーションと呼ばれる強い東風に流されることなく、高度65kmでほぼ同じ場所に留まっていたのです。

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金星探査機「あかつき」が撮影した弓状模様 Image Credit : ISAS

金星の新たな謎をとく鍵は、はるか下の金星の地形にありました。金星の地形と弓状構造の位置を比較したところ、弓状模様の直下に標高5kmにも達するアフロディーテ大陸が位置していたことがわかったのです。この発見から研究グループは地形の影響を模擬し、金星大気の数値シミュレーションを行いました。その結果、山岳などの地形の影響を受けて高度10kmの下層大気が気圧変化を起こすと、上層に巨大な弓状構造が生まれることが判明しました。

山岳地帯の影響を上層大気まで伝えたのは、「大気重力波」と呼ばれる現象です。山を乗り越える際に持ち上げられた空気は、周りの空気より重いため下向きに移動します。重力により加速された空気は元の位置より下へと移動しますが、今度は浮力により上向きに力を受け上昇を始めます。この大気の振動がさらに上にある大気にも伝わり、波となって上層大気まで伝わるのです。

「大気重力波」は地球上でも発生しますが、金星で観測されたような大規模な現象は太陽系全体でも例がないと考えられています。今後より詳細なシミュレーションを行うことで、波の発生源である下層大気の気象についてより多くの知見が得られるのではないか。「あかつき」がもたらした金星の謎のさらなる解明に期待が高まっています。

国際宇宙ステーション(ISS)の根幹を支える日本の技術を使ったバッテリの取り付け、起動完了!

 「こうのとり」6号機(HTV6)によってISSに運ばれた新型バッテリー6個すべてが無事取り付けられ、2017年1月14日午前4時15分に起動したことが確認されました。このバッテリーには日本の技術により開発されたリチウムイオン電池が使用されており、今後のISSの電力の供給源を日本技術が支えていくことになります。

 「こうのとり」は、日本のISS補給機です。食料や研究用資材等、必要物資の輸送はISS参加各国が協力して行っており、日本の補給機がこの「こうのとり」です。H-ⅡBロケットによって打ち上げられ、ミッションを終えると大気圏に再突入させて燃やします。各任務で新しい機体が使用されるため、今回は6号機と名前がついていたのです。

 そして今回、日本の企業であるGSユアサ製のリチウムイオン電池を使用したバッテリーがISSへ運ばれました。

 リチウムイオン電池とは、リチウムイオンの移動により充放電を行う、小型で軽量の電池です。携帯電話やパソコンなど充放電が必要な機器に主に使用されており、他にもロケットや深海調査船、病院や工場の非常時用電力等にも使用され、用途は多岐に渡ります。近年、電気自動車への応用で高い注目を集めています。

 これまでISSで使用されてきたニッケル水素電池と比較し、非常に効率良く充放電が出来、高密度の電力の蓄電が可能です。また、度重なる充放電による消耗が少なくバッテリーの寿命が長いため、交換サイクルの長期化が期待されています。 

 なお、今後こうのとり9号機までに、ISSで使用されている48個のニッケル水素バッテリーを全て24個のリチウムイオンバッテリーに交換していく予定です。

 ISSで使用される電力のバッテリーを日本の技術が担う日が来るのは、そう遠くないでしょう。

日本独自の新型ロケットエンジン「LE-9」
運用に向けて試験中

JAXAは、新型H3ロケットの大型液体エンジンであるLE-9の燃焼試験を行っています。H3ロケットは、現在運用されているH2Aロケットの後続機として開発されており、2020年に試験機1号機の運用が予定されています。

LE-9は、H3ロケットの二段あるエンジンのうちの第一段エンジンに使用されます。
現在運用中のH2Aロケットに用いられているLE-7Aエンジンは、二段燃焼という方式を用いています。二段燃焼は、副燃焼室でタービン駆動ガスを生成し、そのガスを主燃焼室で燃焼させます。これにより高い推力が得られますが、高温高圧のガスが配管内に残るため爆発しやすく危険でした。この状況を打開するのが、JAXAが10年に渡り研究開発を行ったLE-Xというエンジンです。LE-Xには「エキスパンダブリード」という方式が採用されています。この方式では燃焼室を冷却したガスでタービンを駆動し、駆動後のガスは排気されます。これにより、高温高圧のガスが配管内に残らなくなり安全性が高まりました。また副燃焼室がないことで構造もシンプルになり、制御も容易になりました。さらに、その開発期間と開発コストはLE-7Aの半分を目指して開発されました。LE-9エンジンには、このLE-Xの開発で得られた技術が活かされています。

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日本のロケットエンジン開発の流れ(Image Credit:JAXA/文部科学省)

LE-9エンジンが低コストで高い信頼性を目指しているように、H3ロケットは従来のロケットよりも低いコストでの運用を目指して開発されています。打ち上げコストはH2Aロケットの約半分に削減する予定で、組み立て工程や射場準備期間なども半分に抑えることで受注から打ち上げまでの期間も短縮されました。これによりニーズに合わせた迅速な打ち上げが可能になります。

燃焼試験の他にも製造方法などの試験を行い、終了後H3ロケット試験機1号機に搭載されます。2020年以降、20年間に渡って毎年約6機の運用が予定されています。