14号特集・宇宙飛行士×医学スペシャルインタビュー

Kawano-1
みなさん、TELSTAR14号は読んで頂けましたでしょうか?
今回は、14号の特集「宇宙飛行士✖〇〇学」の医学でご紹介した、松本大学大学院健康科学研究科の河野史倫先生にインタビューをしました。宇宙医学とはどのような分野なのでしょうか。先生に聞いてみました!

Q:河野先生は、どのような研究をされていますか?
「宇宙滞在の影響を受けにくい体質を地上でつくる」ことを目標として研究を行っています。地球の重力に逆らって姿勢を維持するために、持続的に働く筋肉を抗重力筋と呼びます。重力が非常に小さい宇宙では姿勢を維持する必要がないため、抗重力筋が使われずに弱っていってしまいます。現在の国際宇宙ステーション(ISS)では、船内で運動することで筋肉量を維持しています。しかし、2030年代に行われる有人火星探査ミッションでは探査船にトレーニング器機が搭載できるか分かりません。このような「運動が著しく制限される環境」でも宇宙飛行士の健康を維持できるようにするため、運動によって筋肉量を維持することの他にも、右図のようなマウスを使った実験により重力の影響を受けにくい体質を探っています。
また、筋肉に対する重力の役割という観点から、抗重力筋の起源を解明することも私たちの研究の目標です。

スクリーンショット (557)

Q:研究で目標としていることを教えてください!
自分の専門領域に狭めて言うと、抗重力筋のメカニズムの解明などがあります。しかし、もっと広く先まで自分の研究を見据えて考えると、人類の進化を知りたいという究極的な目標が思いつきます。
人類はまだまだ進化の途中だと思うんです。地球という環境に完全に適応できているなら”年をとって重力に逆らって動けない”なんておかしいはずです。だからこれからもヒトの生理機能は変わっていく可能性が高いのではないかと思っています。生物の進化において、骨格筋の発達や分布が鍵になると思うので 、骨格筋研究という立場から明らかにしたいです。ちょっと現実味に欠ける感じもするかもしれませんが、そんな漫画みたいなことに本気で挑戦できることが研究の醍醐味かなとも思います。

Q:宇宙医学研究に関わっている方の出身学部はどこが多いでしょうか?
分野の特性上当然ですが、医学部出身で医師の方がやはり多いです。しかし、私も含め医師ではない研究者もたくさんいます。体育、教育、理学部など出身学部は様々ですが、たいていは生理学や運動生理学の専門家です。私も体育学部の出身ですが、健常人である宇宙飛行士の健康維持に関する研究なので、体育やスポーツの専門家がやらねばならないことかなとも思っています。海外では専門の研究機関がありますので(NASAではAmes research center、ESAはDLR、ロシアはIBMPなど)、さらに出身分野は広いのではないでしょうか。

Q:宇宙医学研究には、どんなルートで関われますか?
これは宇宙医学研究を目指す高校生にとっては最も大事な問題ですね。宇宙医学に関わる研究室は少なく、医学部だからと言って必ずある訳でもありません。初めから特定の研究室を目指して大学を選ぶという手もありますが、大学で授業を受けて研究のことも知った状態の方が自分の興味ある分野や関わりたい仕事などがはっきり見えてくると思います。なので、大学院から宇宙医学の研究室に入るというのも有意義です。

Q:これからの宇宙医学分野はどうなっていくと思いますか?
地上での医療との結びつきがより強くなっていくと思います。これからの宇宙開発ではより長期の宇宙滞在が見込まれるため、これまではなかった予防医学の理論、船内での医療、遠隔医療などが必要とされてきます。これらが宇宙医学のためだけに発展するのは難しく、地上での意義やニーズと連動して進歩していくはずです。そういった見方からすると、地上とは気圧などが異なる上空での特有の症状を扱う航空医学やへき地医療、急病の人を助ける救急医療など様々な医療についても熟知していかなければならない分野だと思います。

Q:河野先生の将来の夢を教えてください。
自分の研究成果が宇宙で使われスタンダードになることです。それまでの過程で発見したことを権威ある科学誌に発表し、自分の専門領域を確立していくこともまた夢の一部です。

Q:学生へのメッセージをお願いいたします!
私がいつも研究を行う上で大事に思っていることは、好奇心・勇気・覚悟という3つの気持ちです。どんなものや現象にも興味を持ってじっくり観察してみること、おもしろそうなことは思い切ってやってみること、そして一度取り掛かったら諦めずに形にまとまるまでやり遂げることです。最後までやり遂げれば必ず次に何をすべきかが見えてきます。みなさんも強く興味を持ったものには勇気と覚悟を持って飛び込んで見てください。これから様々な選択を迫られることがあると思いますが、興味の沸く方へ是非進んでいってほしいと思います。


宇宙医学分野では、河野先生のように熱い情熱を持ちながら研究に取り組んでいる方々がたくさんいらっしゃいます。いろんな学部から研究に関わることができるので、興味のあるテーマなどを調べたりしてみてください!

記者:鈴木優子

第12回 日本の星空環境

こんばんは!新月の夜がやってきました。

沖縄ではすでに梅雨入りしていますが、それ以外の地域では梅雨入り前の過ごしやすい日が続いていますね。星空の主役はもう春から夏の星座へ変わろうとしています。
水田にも水が張られ、田植えの時期真っ最中となっています。
IMG_7203-2.lr-2

【星降る夜に】兵庫県養父市

突然ですが皆さん、天の川を見たことがありますか?
私は幼いころから星に興味がありましたが、天の川を見たのは大学入学後です。
日本の人口の70%は天の川の見られない地域に住んでいます。
世界平均は36%なので、世界的に見ても日本は天の川が見られない地域にあるといえます。
光害は星が見えなくなるだけでなく、生態系や人間への影響も懸念されています。
そのような中、5月22日毎日新聞にこのような見出しがありました。
「環境省「星空見やすさ」全国ランク作成へ 光害減少狙い」
これは、環境省が星の見やすさを客観的な指標として設け自治体が光害対策に取り組むきっかけとなることを目的としています。しかし、大都市はどうでしょうか?
これでは、地方都市や過疎地の自治体にしか効果がないようにも思えます。

都市部の光害対策の事例としてアメリカ フラッグスタッフが有名ですが、日本の都市部において光害対策に結び付けるにはどうすればよいでしょうか?
これまでも、市町村や県単位で光害に対する取り組みや、望遠鏡メーカー主催のライトダウンなどが行われていましたが、このような取り組みを知る人はほとんどいません。
まずは、ライトダウンの日には町のシンボルとなるタワーや橋のライトアップを取りやめるなどの取り組みが、光害対策後進国の日本には必要なのかもしれません。
IMG_9760-2

星を見上げるときは、この環境問題について考えてみてください。
未明には天の川が見ごろを迎えつつあります。どこか地方へお出かけの際は少し早起きをして満点の星をみてみては?

次回の新月は6月24日です。お楽しみに!

written by 打海 将平

第21回 月の生まれかた

皆さんこんばんは。今月も、満月の夜がやってきました。すっかり春の暖かさに包まれ、心地の良い日々になりましたね。花粉や微小粒子状物質などで星が見えにくくなってしまうこともありますが、薄いフィルターのかかったような今ならではの星空も楽しんでみて下さい!

【これまでの月形成説】
さて、今夜は月のでき方についてお話したいと思います。
「月がどのようにしてできたの?」皆さん1度はこの疑問を持ったことがあると思います。“ジャイアント・インパクト説”という言葉、聞いたことはありませんか?

ジャイアント・インパクト説は、数ある月形成説の中で最も有力だとされてきました。その名の通り、大きな衝撃を与えられて月が形成された、詳しく言えば、できたばかりの原始地球に火星サイズの天体が斜めの角度で衝突し、その際に飛び散った破片が集まって月が形成されたのではないかという説です。

月形成の説を考える際、私たちはたくさんの条件を考慮しなければいけません。それらは月の特徴に基づいています。例えば、「質量が地球の100分の1もある」「地球と比べコア(核)が小さい」「回転の勢い(角運動量)が大きい」など。また「起こり得る」ことも重要です。様々な説でシミュレーション行い、あらゆる条件を最も満たしたものが“ジャイアント・インパクト説”だったのです。ただ、その説にも矛盾点はあるため、月の誕生についての研究は終わることはありませんでした。

moon0019

【月形成・新説?!】
さて、本題に移りましょう。約3ヶ月前の2017年1月、英科学誌Nature Geoscienceによって、定説を覆す論文が発表されました。

その研究結果は「月は、原始地球に小さな天体が次々と衝突したことによって形成された可能性がある」ということ。簡単に言うと、月の材料の破片たちが複数回の衝突で生み出されたという説です。幾度ものシミュレーションを重ねた結果、微惑星が衝突するごとに原始地球の周囲に残骸の輪が形成され、その後それらが合体して「小衛星」が形成されることが分かったのです。この小衛星の数々が、最終的に月を形成したと言われています。

 

【まとめ】
誰も見たことがない、月の誕生。新説が本当正しいかどうかもまた、誰にも分かりません。あなたも月を眺めてその誕生を想像してみてください。きっと、素敵な夜になりますよ。では、また満月の夜に。