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「医」を「宇宙」で。 〜SPACE MEDICINE WEBINAR WEEK 2020 SUMMARY 〜

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はじめに

Space Medicine Japan Youth Community(以下、SMJYC)は宇宙医学に関心を持つ学生や若い世代が集い、各々の興味を深め、互いに学び合うコミュニティです。大阪医科大学、大阪大学、東京大学の医学生によって2017年に創設されて以来、宇宙医学について詳しく学べる様々な企画を行ってきました。初めは10人程度でしたが、メンバー数は増え続け、現在、全国で約220名が集まるコミュニティとなっています。

 

今回、SMJYCは、8月24日(月)から8月28日(金)にかけて第1回目の宇宙医学ウェビナーウィークを開催しました。計150名の方からの応募があり、5日間の述べ参加者は400名に及びました。このウェビナーでは、宇宙医学研究の最前線で活躍されている先生方に宇宙医学についてのお話をしていただきました。

 

そこで、ウェビナーに参加した6名の方がウェビナーで学んだことや感想について紹介していきます。

 

WEBINAR WEEK SUMMARY

 

はじめまして、大阪市立大学医学部医学科2回生の黒松俊吾です。今回は、SMJYCによる宇宙医学ウェビナーウィーク全体のプログラムを比較して、感想を書いていきます。

 

その前に、僕が宇宙に興味を持ったきっかけを簡単に書きます。宇宙に興味を持ったきっかけは、実はそんなに大したことはありません。もともとは医学部なので、普通にお医者さんになろうと思っていました。(それも医療ドラマの見過ぎという単純な理由ですが...)しかし、医学部に入ってから、このままお医者さんになっていいものかと、ふと思ってしまいました。

 

皆さんも、幼稚園や保育園のころには、仮面ライダーとか、プリキュアになりたいと言っていた方もいるんじゃないでしょうか?それが中学生、高校生と年齢を重ねるにつれて、いつのまにか現実的な夢に変わっていくものではないでしょうか。僕はこの歳になってもまだスーパーマンになりたいです。宇宙と医学、宇宙行けたらすごい!そんな気持ちで宇宙に興味を持ちました。

 

ここでは多くの先生方が言及されていた内容をそれぞれの観点でお伝えしていきます。

 

宇宙開発の歴史に敬意を示すということ

 

Credit:NASA



どんなことに対しても、その歴史に敬意を払うことは大切なことです。

 

例えば、義務教育の最中にいる子どもには、日本では誰しも学ぶ権利があります。しかしこれは当たり前のことではありません。学ぶ権利がなかった子供たちが自分たちの権利を主張して、初めて皆さんは義務教育を手にすることができ、これは宇宙においても同じ事が言えると思います。人はついつい楽しい部分、輝いている部分に目がいってしまいがちです。

 

皆さんは宇宙飛行士と言われてどんな人を思い浮かべるでしょうか?人類で初めて宇宙空間に行ったユーリ・ガガーリンでしょうか?それとも人類で初めて月に降り立ったニール・アームストロングでしょうか?もしかして宇宙兄弟の南波六太だったり?人それぞれですよね。

 

しかし、彼らの輝かしい功績は、多くの失敗と犠牲で成り立っています。例えば、アポロ計画の訓練の最中に火災に巻き込まれ命を落としたガス・グリソム、チャレンジャー号爆発事故で命を落とした日系三世のエリソン・オニヅカ。皆、宇宙を夢見た勇敢な宇宙飛行士です。



宇宙開発は、多くの人々の成功と失敗の元に成り立っている、ということを忘れてはなりません。この話は、主に嶋田先生がされていましたが、他の先生方も自身の話をする前に、その歴史的背景をおっしゃっていました。

 

中でも、桒田先生は、自衛隊に所属されており航空医学を専門とされています。その活動範囲は、主に地球の中なので宇宙に比べれば、さほど危険はないのではないかと思われるかもしれません。しかし、遡れば戦時中の死亡事故の話や、現代でも、操縦中に自分がどこにいてどんな状態なのかわからなくなり、死亡事故に至る例があるというお話も伺いました。

 

地球も宇宙開発のことも、過去から学ぶことが多くあると言うことを改めて学びました。

 

地球での応用を考えるということ

 

宇宙研究、と一口に言っても、その研究内容は一人一人違います。しかしながら、実はそのゴールには宇宙でのより良い生活はもちろんのこと、地球での生活も関係しているようです。

 

Credit:NASA

 

例えば、JAXAの永松先生をはじめとして、宇宙空間における放射線の影響を研究している先生は多くいらっしゃいます。それは、宇宙空間では、地球に比べて多くの放射線に晒される特殊な空間だからです。そのことは、地球での生活にどのように活かされるのでしょうか。

 

地球上でも、とても放射線量が高い場所があります。その一つが原子力発電所です。2011年、日本でも福島第一原子力発電所で地震による大きな事故が起こり、その周辺は、とても放射線量が高くなってしまいました。ここで、宇宙空間で活躍する人工衛星には、放射線を計測するX線天文衛星というものがあり、そこで用いられている、放射線を可視化する技術も使われました。

 

宇宙空間での技術は地上でもこのように役立っているのですね。今後も宇宙での技術と地上での技術が相互に発展し、役立っていくといいですね。

 

また、河野先生は衰えない筋肉を作る研究をされています。これは、宇宙空間では、人間の筋肉はどんどん衰えていってしまうからです。これは地球でも大いに応用できそうですよね。スポーツ選手はもう引退しなくてよくなるかもしれませんし、寝たきりのご老人はいなくなるかもしれません。

 

このように、宇宙空間での研究が地球でも多くの人の助けになる、ということを多くの先生がおっしゃっていました。

 

これからの宇宙を考えるということ

 

credit:NASA

 

今後の宇宙開発の方向性はより遠くへ、そしてより長く滞在することだと言われています。それはとても夢があることですが、同時に難しいことでもあります。各先生は一人一人違う研究をしていますが、その目指す先は同じです。人類が、少しでも快適に宇宙で過ごすことです。

 

例えば、JAXAの松﨑先生はスペースデブリ、いわゆる宇宙ゴミのお話をされていました。スペースデブリとは、宇宙空間に放置されている役目を終えた人工衛星を指します。人類が新しい場所に踏み入れれば、喜びとともに、考えなければならない問題も生じます。それを先回りして考えていく、というのも研究の役割の一つなのですね。

 

今回講演してくださった先生方は、皆さんこれからの宇宙の話をしておられました。もちろんそれが聞いている我々のためになる、ということもあると思います。しかし、それ以上にこれからの宇宙を想像していくということは楽しいことなんだな、と感じました。

 

宇宙に興味がある人も、これから興味を持つ人も、研究者も学生も、想像する権利はみんな平等です。皆さんも時には宇宙に思いを馳せてみてはどうでしょうか。

 

おわりに

 

最後に先生方の話を聞いて僕の想像する未来、これから解決していきたいテーマを記したいと思います。

 

ずばりこれからは、もっとたくさんの人が宇宙に行くようになる、と思っています。そうなると、また新しい問題が生じますね。僕が注目しているのは宇宙酔いの問題です。

 

宇宙酔いというのは、宇宙に行くと体調が悪くなって嘔吐などの症状を催します。人によって症状は様々ですが長く続く人もいれば、すぐに宇宙空間に慣れる人もいます。現在は、宇宙飛行士は2週間から半年以上滞在するので、宇宙酔いに苦しむ時間はその長い滞在時間の中では、短い時間でした。

 

しかし、これから一般の人が宇宙に旅行に行くとすると、果たしてその宇宙酔いの時間はごくわずかな時間で済むのでしょうか?皆さんも、せっかくのハワイ旅行で3日中2日は時差ボケでしんどかったです、なんてことになったら嫌ですよね。だからこそ、これから解決すべき課題なのではないかと僕は思っています。僕にはまだなんのアイデアもないですが、こんなことできたらいいなとか考えるだけでも楽しいものです。

 

皆さんも頭が柔軟な若いうちにいろんなことを想像してみてはいかがでしょうか。

 

(黒松俊吾・嶌村美来・中夷黎)

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