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「 【MEDAR】 流れ星と教育にかける挑戦」

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 インタビュイー





田中康暉さん

MEDAR代表 東京大学工学部航空工学科4年

NHK学生ロボコン、アジア太平洋ABUロボコンへの出場経験をもつ

大学では、太陽風ヨット(宇宙ヨット)の研究、月面で建築を行うロボットのシステム設計をおこなう。




川地皐平さん

MEDAR理事 中部大学の工学部のロボット理工学科(卒業)

卒業研究ではMADARで開発している流星の自動観測機の開発をおこなう。



 

 社団法人MEDAR(メダル)


2019年12月、「HAYABUSA 2 サンプルリターンカプセル観測研究テーマ提案募集」の公募が開始された。

当時大学1年生、友人同士であった田中康暉 さん、川地皐平 さんを含む4名が「はやぶさ2からのメッセージを受け取れ!〜大気圏再突入物体による電離柱発生現象の観測研究〜」をテーマに応募、書類審査を通過した(2020年 3月)。

社団法人MEDARは、上記研究の一層の発展と社会実装を行うための後継団体として発足した。

今現在、主軸となる流星バースト通信の研究のほか、MEDAR School という教育事業を軸に活動している。流れ星の研究では、流れ星を地上から観察することで、宇宙機の大気圏再突入、中間圏の大気データの取得を目的としている。




 MEDAR School


田中さん、川地さんが創造アイディアロボットコンテストへ参加していた当時(10年前)から、科学技術研究、もの作り教育が全く整備されておらず、才能を持つ方を救う制度もないことを問題視していたことをきっかけとして開始した。

今は外部委託という形で、出前授業を中学校・高校などの教育機関などにサービスの提供している。




 取材


【はじめに】


Q. 田中さんと川地さんは小学校からの知り合いだとお聞きしました。お二人が仲を深めたきっかけ、MEDARの設立にまで至った背景についてお聞かせください。


田中さん)

川地とは、小中と同級生で、中学校でともにロボコン部の発足を目指したところから仲を深めていきました。結局ロボコン部の創設は職員会議で却下されてしまいましたが。

その後高校が別れましたが、岐阜大学が主催する「岐阜大学宇宙工学講座(2016)」での再会を機に、JAXAで「HAYABUSA 2 サンプルリターンカプセル観測研究テーマ提案募集」に一緒に応募しないかということになりました。

当時関心を持っていたアマチュア無線での通信方法の一つに、流れ星が地球大気圏に突入する際に発生するプラズマに電波を反射させて遠方と通信する方法があります。この通信方法を「はやぶさ2」のカプセルでできたら面白いんじゃないかと思い、研究プロジェクトとして開始しました。しかし、プロジェクト開始後すぐに、新型コロナウイルスが蔓延したことで望むデータを取れず、不完全燃焼のままプロジェクトが終了したことから、次に繋げる研究事業として今のMEDARが存在しています。


Q. JAXAの公募など宇宙との関わり方の選択肢はたくさんある中で、なぜ衛星事業を選ばれたのでしょうか。


田中さん)

僕に関しては衛星事業というつもりでやってなくて、MEDARが目指したいのは人工物リエントリー(大気圏への再突入)マネジメントです。現在の宇宙開発では、宇宙機の大気圏再突入に関するマネジメントが全く成されておらず、それらの解決を考えたのがきっかけです。

僕は小惑星探査機はやぶさの世代で、小学3年生のときの「はやぶさ」帰還のニュースを見てから宇宙が好きになったこともきっかけとしてあります。宇宙が好きになってからは、中学ではロボコン、高校では模擬人工衛星のCanSat の大会へ出場しました。大学も航空工学科へ進学したり、サークルでロボコンをやったり、「はやぶさ」の後継機である「はやぶさ2」に関わることができたことが背景にあります。


Q. 流星バースト通信と衛星の掛け合わせは、田中様たちの独自で思いつかれたものですか。


田中さん)

そうです。元々流星バースト通信は、衛星通信がない時代、通信技術として流星の利用が期待された時代に、軍事利用を目的として確立した技術です。

流星バースト通信は、通信技術としてはあまりにも脆弱で衛星通信に取って代わられたのですが、流星バースト通信の技術を応用して大気へ再圏突入する人工物から反射してくる電波を見ることによって、混信、ノイズ等の無線通信障害について観測・研究が行える分野ではないかと考え、2019年に研究テーマとして提案しました。



【社団法人MEDARの今後の展望】


Q. MEDARさんの研究や教育事業の発展が、安全保障以外で考えられる社会的な影響はありますでしょうか。


田中さん)

今後、より幅広いパラメータ(観測システム)で流れ星を見てあげることで、

何が、どこに、いつ落ちたかみたいなのを全てモニタリングできるようなシステムの開発につながるのではないかと考えています。


MEDAR School の方は、ロボコンなどをやっていても、今勉強してることが将来何に繋がるかなど分かっている人が本当に少なく、教えられる人も少ないことが本当に問題だと考えています。なので、その問題の解決に向けて、役割を果たしたいと考えています。

あと受験についても、僕は推薦入試で東大に入学したんですが、そういった総合型選抜は今後どんどん増えてきていくと予想しています。やりたいことを極めて進路を開くみたいなのも増えてきているので、MEDAR School の需要は必ず増えるというふうに考えています。


Q. これからそのMEDAR School のカリキュラムをどこに届けていきたいですか。


田中さん)

基本的に都心部では、外部の教育サービスを取り入れる体力があります。一方で、地方にはその体力がないので、スポンサーをつけるなどして、地方の公立学校などに届けていけたらと考えています。



【中高生の方々へ メッセージ】


Q.
 宇宙開発に興味をもち、何らかの挑戦をしたい中高生の方々がやっておくべきことを教えて下さい。

田中さん)

僕は、時間を忘れるぐらい熱中できることと出会えたことが本当に幸運だったなと思います。熱中できる何かが見つけられて、中学生、高校生のうちからチームを作れる人は、本当に運が良いと思うし、できることならそうして欲しいです。

一方で熱中できるものが見つけられない子たちの方が多いと思うんですね。

そんなときは、変なとこで妥協せずに、ずっと探し続けてくださいとお伝えしたいです。

川地さん)

周りに一緒にできる仲間がいなくとも、学校以外、それこそネットでの繋がりもあるので、仲間がいないからやらないのではなく、自分が興味を持ったのなら、その意思をずっと持ち続けてやっていくといいのかなと思います。


Q. 勉強や部活など、打ち込むものは人それぞれですが、何かしらのプロジェクトに参加する意味などありますでしょうか。


田中さん)

必要な知識、技術、設備が揃っている東大教授の方を集めたとしても、適切なマネジメント抜きには宇宙開発のプロジェクトを成功させることはできないと僕は思います。

プロジェクトを成功させるには、必要とする学問的知識を勉強するのとは別に、人を動かすマネジメントの勉強が必要で、実際にプロジェクトへ参加することがマネジメントを学ぶ近道で、ある程度自分で責任持って関わっていく経験が、おそらくは社会人なってからすごく大事になると思います。


川地さん)

田中が言うように、優秀な人たちが集まったとしてもプロジェクトを動かすことはできなくて、スケジュールや人材の管理だったりが重要であることをMEDARで活動する中で強く感じています。

プロジェクト運営をやってると、模擬の社会で働いてる感覚で世の中の回り方を大まかにでも知ることができるので、ある企業のトップとして働きたい人間にとって良い経験になると思います。


Q. 高校生から現在に至るまでで最大の教訓があれば教えてください。


田中さん)

最大の教訓としては、最初から大人を頼ろうとするなということです。

よく大学生ブランドを使って挑戦をしろということが言われますが、それは誰かに頼ってということではなく、まずは実践の中から、人の信頼を得るだけの実力を付けるべきだと思います。

川地さん)

時間というのは本当にすぐ過ぎていってしまうので、すぐに行動に移すという事が教訓になるかと思います。行動に移してみると自然と周りにも集まってきて、何か進んでいくし、とりあえずやってみようっていうのは、めっちゃ思いました。


Q. 最後に、ご自身のこれまでの経験を踏まえて、現役の中高生、もしくは過去のご自身に、アドバイスできるとしたら、どのようなアドバイスをしますか。


田中さん)

過去の自分に会えるのなら、「そのまま行け」と言うと思います。

現役の中高生に対しては、「学校の外を見ましょう」ですかね。

学校は授業だけでも6時間、7時間ぐらいが潰れちゃうし、他者にデザインされてない開けたところに出てみましょう。それは何かを調べるだけでもいいし、コンテストに出るとか、学校以外の大人、学校外の友達、宇宙が好きな友達に出会うということでもいいと思います。


川地さん)

先にも述べたように、自分が学んでるものが何に使われているのか、使えるのかまでを学ぶことがすごく大事じゃないかなって思います。




取材を終えて


取材を終えて、MEDARさんの事業内容は、発足メンバーの好奇心の具現化のため、現在の宇宙教育や将来の宇宙開発に対する危機感に打開策を提示するために練られてものであることが伝わってきた。

宇宙開発と聞くと、私たちの生活とはどこか隔絶したもののように思える。

そんな中、MEDARさんのやられている、流星バースト通信の研究事業や教育事業(MEDAR School)は、比較的身近なところで現在、もしくは近い将来に社会問題となる事柄に対する1つの打開策を打ち出すものである。

さらに驚くべきことが、それらの事業を私と同世代の人がやっているという事である。

多くの人々は、はじめリソースが少ない状態からスタートする。MEDARさんもそうだったのではないだろうか。
リソースが少なくとも秀逸なアイデア1つと、それを突き詰める努力、一歩を踏み出す力があれば想像以上の結果を手にすることができる。

本記事が、読者である中高生・大学生の方にとって新たな挑戦への契機になれば幸いです。




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取材:神山 彩果 千葉 俊彦  文:千葉 俊彦

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