再利用型ロケット特集 後編 〜日本の再利用ロケット計画〜
前半では、国外の再利用型ロケットの今について紹介した。後半では、日本における再利用型ロケット開発について深掘りしていく。
日の目を見なかった宇宙往還機計画
先ずはJAXAが開発していた幻の有翼宇宙船計画、HOPE計画について紹介する。遡ること40年、1980年代からその計画は始まった。目標は、再利用可能な宇宙往還機でISSへの物資輸送を行うこと。図1のような機体が構想されていた。大気圏への再突入技術、自動着陸技術を数々の研究、実験により10数年かけて獲得。バブルの煽りを受け、2000年にはキリバス共和国のクリスマス島を飛行場として利用する権利まで得ていた。しかし、1999年、2003年に起こったH-IIシリーズロケットの打ち上げ失敗により、宇宙予算が削減、いくつかの技術的課題もあり、HOPE計画は中止となってしまった。だが、一連の研究で得られた知見は数多くあり、その後の宇宙開発に役立てられている。
図1 HOPE計画の機体のイメージ図
© JAXA
JAXAの手がける再利用型ロケット、CALLISTO
次に、現在も続くJAXAの再利用型ロケット計画、CALLISTO計画について紹介する。CALLISTO計画(Cooperative Action Leading to Launcher Innovation in Stage Toss back Operations)は、JAXA、※CNES(フランス国立宇宙研究センター)、DLR(ドイツ航空宇宙センター)の三者共同の実験プロジェクトであり、将来の宇宙輸送システムのコスト削減と効率化を目指しており、日本は各種タンク類や推進系、誘導ソフトウェアを担当している。目指す機体の方式としては、SpaceXのFalcon9と同じく一段目が自動的に地上へ軟着陸を行うというものだ。
初期研究としてRVT(Reusable Vehicle Testing)とRV-Xというプロジェクトがある。RVTでは、1998年から2009年にかけて最低限の装備を積んだロケットを上空まで浮上させ、地上へ軟着陸させるという実験を14回行っている。当初は完全再利用型ロケットの開発を目的として、有人飛行の展望もあった。続くRV-Xは2010年頃から現在も続いており、主にCALLISTO計画が念頭に置かれている。RVTより規模が拡大され、より大きな機体を100mほどの高度まで飛ばす事が予定されている。この最初の実験は本来2021年を予定していたが、コロナウイルスの蔓延などの影響により計画に遅れが出ているようだ。
図2 CALLISTO計画の機体のイメージ図
©JAXA
このように、数十年前から現在にかけて、日本も再利用型ロケットの実現に向けて動いている。今後RV-Xでの技術実証が終わり次第、CALLISTO計画に本格的に着手していくようだ。勿論、CALLISTO用の基礎研究も既に始まっている。最初の飛行試験は2026年ごろに予定され、早ければ2030年に一号機を打ち上げられるという。日本はロケット再利用化の潮流に乗ることができるのか、続報に期待である。
画像引用元:
カバー画像 https://jda.jaxa.jp/result.php?lang=j&id=ba3056beba696d637e20239aa8403edf
図1 https://jda.jaxa.jp/result.php?lang=j&id=7c6d4482503c1ec29d25c69d4bd958dc
図2 https://www.kenkai.jaxa.jp/research/callisto/callisto.html
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文責:檜皮 准成