TELSTAR vol.6はお手元に届きましたでしょうか?
こんにちは。TELSTARのすえです。

TELSTAR vol.6では「イマサラ聞けない宇宙のこと」と題し、まだ宇宙のことをよく知らないなぁという人向けに、疑問に思うようなことを取り上げてみました。

さて、そのなかで宇宙飛行士にスポットを当てた記事があります。私は12ページの宇宙と人の関わりについて解説したページを担当したのですが、そこにこっそりクイズを用意していました。それは、

「きぼうはどこでしょう?」

「きぼう」は日本が開発した宇宙ステーション(ISS)の実験棟です。「きぼう」という愛称がつくまでは、Japanese Experiment Module(JEM)と呼ばれていました。今でも、開発当初からきぼうを知っている人の間では「JEMではさぁ…」などと呼ばれることもあるので、「きぼう」のことを「JEM」と呼ぶと、「おっ!この人宇宙のことよく知っているな」なんて思われるかもしれません。せっかくなので、以下では「きぼう」のことをJEMと呼びましょう。

さて、JEMはどこにあるのでしょうか。
IMG_2161

丸で囲んだところが、JEM(きぼう)です。
ISSは矢印の方向に進んでいます。と、いうことはJEMはISSの先頭にあるわけです。そこである問題が発生します。
プカプカ浮いている宇宙ゴミ(スペースデブリと呼びます)。ISSがその中に突っ込んでいったら、JEMは真っ先にスペースデブリにあたってしまいます。
デブリがJEMにあたって穴が空いて、空気が漏れてしまったら、大変なことになります。そこで、デブリが当たってしまっても、穴が空かないように強固、しかし楽に宇宙へ運べるように軽く作られています。デブリについて詳しく知りたい方はTELSTAR vol.3を御覧ください!

きぼうは6号にも書いてあるとおり、実験室の役割を持っています。しかし、実験以外に、こんな風に記念撮影や記者会見に使われることが多々あります。

(©NASA)
記者会見中の写真。日本人宇宙飛行士がいないのに、日本のJEMで会見しています。


©NASA
ラッスンゴレラ……いや、なんでもありません。
宇宙飛行士の記念撮影の写真ですが、ここにも日本人宇宙飛行士がいないのに、日本が造ったJEMで写真を撮っています。

不思議ではないですか?

せっかくアメリカ人の宇宙飛行士が集まっているなら、アメリカが作った部屋で写真を撮りたいと思うのではないでしょうか?まぁ宇宙に国境はないので、使って頂いて構わないのですが…(何故か上から目線)
これだけ多くJEMが使われるのには理由があります。今回は主な2つの理由を紹介します。

1.広くてキレイ!

JEMは3つのパーツで構成されています。

(画像©NASA)
一つは宇宙飛行士が実験する船内実験室。ここでは生物学、医学、物質・物理科学、芸術など様々な実験が行われています。もう一つは船外パレットという宇宙ステーションの外側に取り付けられたパーツ。ここでもX線天文学や気象学、ロボット工学など様々な実験が行われています。
そして最後。ここが重要になるのですが、
「船内保管室」があります!!画像で黄色く強調しているパーツです。
「えっ??わざわざ『!!』付けるようなこと??保管庫なんておもしろくないよ。」
・・・いやいや、そんなことはありません。これこそ宙飛ぶ押入れなのです。

JEMでは色々な実験用具や標本(サンプル)を使います。学校の理科の実験でも、顕微鏡を使うこともあれば、シャーレやフラスコやガスバーナー、ビーカーなどなど、色々な実験器具を使いますよね。それが一つのテーブルに置きっぱなしだったら、邪魔ですし危険です。そこで学校の理科室にも理科準備室がありますよね。船内保管室はそれと似たような機能を持っています。当たり前のように思えるこの保管室ですが、ISSにある実験室のなかで保管室を持っているのはJEMだけなのです。この保管室のおかげで船内実験室は整理整頓されていて、広いスペースを使えています。

 

2.日本の空調技術が活躍!

ISSは地球のまわりを一周90分で回っています。ISSに太陽が照りつけている間はISSの表面温度は100℃以上、地球の影に入り太陽に当たっていない時はマイナス100℃になってしまいます。宇宙飛行士はスーパーマンではないので、そんな温度にはとても耐えられません。そこでISSの中の温度は外壁でしっかり断熱され、空調でしっかりとコントロールされています。
ただこの空調がうるさいのです。どのくらいうるさいかというと、開発初期のロシアモジュール(部屋)で宇宙飛行士が難聴になったほど。現在ではある程度騒音対策がされているそうですが、まだ音が気になります。
こちらの若田さんのISSツアーの動画をご覧いただくとわかると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=J3bitV6Ml7Q
この動画の序盤でJEMの中を案内しているのですが、ここではあまり気になりません。
ではこちらはいかがでしょうか?
https://www.youtube.com/watch?v=MyNT_EbY9X4
10分あたりでロシアが造ったズヴェズダを案内しているのですが、「キー」や「ブォー」という音が聞こえますか?他の機械の音もあるかもしれませんが、これが空調の音です。そしてズヴェズダの中の雑然とした様子にも注目してください。押入れがないからこういうことになってしまうんですね!!

JEMではこの空調の音が極めて小さい。会見の時に雑音に邪魔されない環境が整っています。
まだまだあるかもしれませんが、JEM(きぼう)が宇宙飛行士達に好まれていることがわかっていただけましたでしょうか?
日本の技術力は宇宙でも活躍しています!!