facebooktwitterinstagram

bannar
メディア > 宇宙フリーマガジンTELSTAR > 冊子スピンオフ > 【20号うちゅうけん!スピンオフ】世界初!宇宙マウス誕生@山梨大学 若山研究室(後編)

【20号うちゅうけん!スピンオフ】世界初!宇宙マウス誕生@山梨大学 若山研究室(後編)

  • LINEで送る

(前編)コチラから

取材日:2018/10/05

どうして”宇宙”で実験?


では、そのような実験をしている若山研究室がどうしてJAXAと協力して、宇宙実験をすることになったのでしょうか?

若山照彦先生:(以下、照彦先生)
実は、僕らはもともと宇宙好きで、何とか宇宙実験をやってみたいって思ってたんだ。


―なるほど。だから今日ハン・ソロ(映画『スターウォーズ』に登場するキャラクター)のTシャツを着ていたんですね。

照彦先生:
いや、今日これを着ていたのはたまたまだよ(笑)

若山夫妻_batch.jpg

▲実は大のスター・ウォーズ好きな照彦先生と清香先生。取材の日、照彦先生は偶然にもカーボンフリーズされたハン・ソロが描かれたTシャツを着ていました。フリーズドライと近いものを感じますね(全然関係ない)。


若山清香先生:(以下、清香先生)
私も小さい頃、将来宇宙空間で実験をしてみたいなって思ってたかな。照彦先生は宇宙飛行士の試験、受けてるんだよ。


―そうなんですね。宇宙飛行士選抜試験、いかががでしたか?

照彦先生:
それがね、最初の英語の試験で落ちちゃったんだよ。もっと面白い試験を受けたかったんだけどね。


―残念、やっぱり難しいんですね。でも、お二人とも宇宙が好きで、何とか宇宙実験をやってみたいってなったわけですね。

照彦先生:
そう。そこでいろいろ調べてみると、宇宙で“哺乳類”の繁殖実験は成功していないことが分かったんだよね。メダカとかイモリの宇宙実験はいっぱい実施されているのは知ってる?宇宙実験用の飼育装置が開発されていて、長期間飼育できるの。一方で、マウスは宇宙で飼育するのが難しいんだ。メダカよりも頭がいいからかストレスを感じちゃうみたいでね。じゃあ、マウスを使わずに(普段若山研究室で行っているような)精子や卵子を扱う実験をすればいい、って思うかもしれないけど、これ(精子や卵子)って80マイクロメートル(㎛:㎜の1000分の1の大きさ)だからね。


―そうですよね、めちゃくちゃ小さいですよね。

照彦先生:
そう。当然ピンセットでもつまめないから、マイクロマニピュレーターで扱うことになる。でも、うちの研究室に配属される四年生の学生たちが、これらをマイクロマニピュレーターで扱えるようになるには、数か月かかるんだ。毎日練習して。それくらい小さくて、扱うのが難しい。それに、実際に宇宙で実験をしてくれる宇宙飛行士には、一回の宇宙滞在で天文とか医療とか様々な分野の実験がたくさんあるでしょ?だから、数ヶ月間も精子と卵子を扱う実験は、絶対(JAXAが)引き受けてくれないんだ。


―宇宙飛行士は忙しいですもんね。それに、微小重力下だから、地上より確実にマイクロマニピュレーターの操作が難しいですよね。

 

▲特別にマイクロマニピュレーターを操作させてもらっているTELSTARメンバーと、画面を見ながらアドバイスをしてくれている若山清香先生。


照彦先生:

うん、そんな理由で“哺乳類”の繁殖実験は今まで成功してこなかったわけ。それでもやっぱり「宇宙で実験したい!」と思っていた僕らは、「フリーズドライ精子を国際宇宙ステーションに保存して、宇宙放射線が精子のDNAにどのようなダメージを与えるのか?っていう実験はどうだ」と提案してみた。


―その実験であれば、JAXAに採用してもらえると考えたわけですね。

照彦先生:
そう、この実験であれば、フリーズドライ精子だから小さいアンプル瓶に常温で保存できるし、置いておくだけだから宇宙飛行士は実験する必要はないし、コストをかなり抑えられるんだ。
宇宙実験はコストが高いから、成功するという結果が分かっている実験しか採択してもらえないんだ。その方がリスクが少ないでしょ?

アンプル瓶_batch.jpg

▲マウスのフリーズドライ精子を密封していたアンプル瓶。


アンプル:注射剤を入れる密封容器の一種で、薄いガラスでできている。注射剤に微生物が侵入することを防ぎ、無菌状態を保つことができる。

(出典:製薬業界の転職支援ANSWERS_業界用語・専門用語関連の用語一覧_アンプル,

https://answers.ten-navi.com/dictionary/cat04/3356/,2019/03/14アクセス)



―確かに、先生たちの実験であればリスクが少ないですね。先生たちの「宇宙で実験したい!」という想いが伝わりました。では、どうして精子に対する宇宙放射線の影響を調べることになったのでしょうか。

照彦先生:
宇宙好きなら知っていると思うけれど、宇宙ステーションにおける宇宙放射線量は、地上よりも数百倍高いと言われている。(これは、福島の原発事故で被災した一番危険な地域より約10倍も高いんだ。)


―宇宙飛行士が、一生のうちに宇宙に滞在できる時間が限られていることは聞いたことがあります。しかし、そんなに宇宙放射線量が多いということは初めて知りました。

 照彦先生:
そう。そこで今回の実験では、「どのくらい精子は宇宙放射線の影響を受けるんだろう」っていうのを調べたわけ。実験対象を精子にしたのは、さっきも言った通り、コストパフォーマンスの高さも理由の一つだけれど、何より、哺乳類が無重力・宇宙空間で健康な子どもを産むことができるかどうかって大事なテーマだよね。人類が宇宙へ進出するとしたら、そこで何世代も暮らしていかなきゃいけない。


―たしかに。それで、どのような実験結果になりましたか?


コチラのつづき、気になる実験結果は、TELSTAR vol.20をチェック!


space pup.png

▲若山研究室がJAXAと進める実験プロジェクト『Space Pup』のロゴ

フリーズドライ精子保存容器_batch.jpg

▲国際宇宙ステーションから戻ってきたフリーズドライ精子保存容器。

 

 


―最後に、高校生たちへメッセージをお願いします。(TELSTAR vol.20と同じ内容です)

照彦先生:
ぜひ教科書に書いてあることが真実かどうか疑ってほしい。先人の言うことを決して鵜呑みにしないこと。バカにされても、荒唐無稽なことに挑戦してください。

清香先生:
私たちは、生物学だから宇宙や工学とは関係ない、と考えるのではなく、必要なものはどんどん取り入れていきます。皆さんも分野の枠にとらわれず、面白い!と思うことをやってほしいです。



編集後記

いかがでしたか?
TELSTAR vol.20で紹介した研究だけではなく、若山先生たちの研究はどれも興味深いものばかりですよね。照彦先生の「ぜひ教科書に書いてあることが真実かどうか疑ってほしい。」というメッセージ。理系の私自身、「教科書を疑うことなんてできるかよ!」って思ったのですが、考えてみれば、教科書はそのときは正しいかもしれないけれど、科学の発展によってどんどん書き換えられていきますよね。まさに研究をするというのは「教科書を疑う」ということに他ならないのかもしれません。羊のドリー誕生のとき実際にそのことを痛感し、現在第一線で活躍されている先生の言葉の重みは違いました。
そして何より、先生たちの「宇宙が好きだから、自分たちの研究を宇宙に持っていきたい!」という想いに感動しました。なんとか自分たちの研究を宇宙に繋げようという熱意が、宇宙マウス誕生を世界で初めて実現させたのです。
みなさんも、自分が好きなこと、ハマっていることなど、何でも“宇宙”と結び付けてみてください。
あなたにしかできない面白いことができるかもしれませんよ!

山梨大学前_batch.jpg

▲この記事がたくさんの中高生に読んでもらえることを切に願っている、なぜかドヤ顔の記者。

 

  • LINEで送る

最新号はこちら!!