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宇宙観から宇宙論へ

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自己紹介
初めまして、TELSTAR新メンバーの永石健人です。大学では物理学を学んでいます。宇宙開発や、観測による新しい発見、天体現象の研究などを見てワクワクしています。そんなワクワクをより多くの人と共有していけるようTELSTARの一員として頑張っていきたいと思います。

5/31 火星の最接近!
さてさて、今この記事を読んでくれている方の中に、今年(2016年)の5月31日の夜空を眺めた方はいますか?
その日は火星が地球に最接近した日です。地球を中心と考えると、火星は約2年2か月ごとに地球の周りを一周するので、次に最接近するのは2018年の7月31日ということになります。望遠鏡を持っている方は、最接近する5/31の前後数週間では見える大きさはあまり変わらないので、火星の表面をきれいに観察するいい機会でしたね。ただ、望遠鏡を持っていない方も別の方法での楽しみ方があります。
まず、火星の同じ時間での位置を、何らかの方法で記録してみてください。すると、ただ空を横切っていた火星があるとき方向を翻し、逆走してからまた元の方向に進む、火星の「逆行運動」が見ることができます。今回はそんな天体の動きと、宇宙論の始まりについてのおおざっぱなお話です。
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むかしの宇宙の見え方
コペルニクスが登場する以前は、「地球を中心として太陽や太陽系の惑星が公転運動をしている。」と考えられていました。それはなぜでしょう?聖書にそう書かれているからだ!と言う人もいるかもしれませんが、そうではありません。今考えたいのはそうした論拠ではなく「なぜその考えが合理的であると人々が受け入れられたのか」です。
当時は、性能のいい観測装置も、人工衛星も持ち合わせていないのです。あるのは己の目のみ、その目で彼らは何を見ていたのでしょうか。
例えば日本のある北半球では、夜空の星は太陽と同様に東から西に流れ、北の方角を見ると、北極星を中心に空が回っているように見えます。力学や天文の知識のない人が、星空の規則性を発見したとき、北のその場所を特別ななにかだと思ってしまうのは自然なことではないでしょうか。実際、彼らはそこを“宇宙の支配者の王座がある“とも考えていたそうです。
もうひとつは、先ほど述べたような、惑星の逆行運動です。規則的に東から西へ動く天体の中で、不思議な動きをするその天体が“惑う”星と名付けられた理由が少しわかるような気がします。

人類こそ宇宙の中心?
地上から観測すると様々な見え方をする宇宙ですが、では実際どういう構造をして宇宙は成り立っているのか、と思うのが人情というものです。この構造を考える上での基礎となる、ある哲学を発したのが、アリストテレスという人でした。彼曰く、「全ての図形の中で対称性に優れている球こそが完璧である。即ち、宇宙もこれと同様に球状であり、地球を中心として、球殻のように惑星と太陽がこれを囲み一番外には固定された星がある。」(1)ということで、当時、これが是とされました。これが、いわゆる天動説というものです。
こうして、アリストテレスによって観測事実に対して一見辻褄の合うような説が示されました。しかし、この考え方が逆に複雑な考え方を導入させてしまいます。その発端となるのが、冒頭で紹介した惑星の逆行運動の存在でした。

天動説の提唱
この不思議な運動にアリストテレスの哲学に沿う形で、解決策を与えたのがクラウディウス・プトレマイオスでした。その解決策というのは、「従円」と「周転円」というものを導入し、惑星は周転円上を周り、周転円は地球を中心とする従円上を周回すると考えることで惑星の逆行運動を説明しました。この150年頃のプトレマイオスの考え方は、1543年にコペルニクスの学説が現れるまで1000年以上も生き続けることになります。コペルニクスの学説が広く知られるようになった『新アルマゲドス』という太陽系のモデルをまとめた著書でもコペルニクスとプトレマイオスの体系を含め6つのモデルが示されていました。このことからも、地球に縛られている我々が目で見る観測のみで宇宙の有様を理解することは非常に難しいことだと理解できます。いつ、地球上のどこで見るかということ、己の中の先入観によって見えてくる夜空が簡単に変化していってしまうのです。

コペルニクスとニュートン
コペルニクス以降、その体系は広く受け入れられたわけですが、その他にもコペルニクスは人類に教訓をもたらしました。それは人類が必ずしも中心ではないということ、ここは必ずしも特別な場所でもなく、宇宙の典型的な場所でもないということです。このあと、ニュートンが力学をまとめ、これがコペルニクスの体系の理論的に裏付けになりました。これ以降は、コペルニクスから得た教訓とニュートンの法則を武器にそこから何が得られるか考えるようになっていくこととなります。

宇宙論のそれから
この後、力学、電磁気学、熱力学という基本的な物理の体系が出来上がっていく時代を貫いて、宇宙論は少しずつ歩みを進めていきました。力学、熱力学と登場していくたびにその理論を取り込み宇宙論は変容していきました。今現在も、素粒子論や情報科学などの考えを取り込み歩み続けています。観測の側面では、新たに重力波天文学という新たな目を手に入れたことで、さらなる進歩が期待されるのではないでしょうか。

参考文献
(1)ジョン・Dバロウ(2013)『宇宙論大全』林一、林大訳 青土社
(2)国立天文台『ほしぞら情報2016年5月 火星が地球に最接近』 http://www.nao.ac.jp/astro/sky/2016/05-topics03.html
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