宇宙食について その9:水はどうするの?
国際宇宙ステーションでは、2008年11月に人間が排出した尿を飲料水にする装置が設置され、2009年5月から実際に使用されています。装置のデビュー時は若田光一宇宙飛行士を含む当時のクルーが、その装置を使って再生した水で乾杯をしました。 宇宙では水の補給が困難なため、そのような装置が必要となっており、仕組みとしては尿を遠心分離後に過熱して再生するようになっています。尿の完全再利用の技術は、宇宙で長期間滞在するためには必須の技術です。
宇宙の無重力の中で人間が長期間滞在していると、骨の密度が下がり骨粗鬆症になります。成人の場合、宇宙の無重力の中では1日で250グラムのカルシウムが余分に尿に排出され、骨量は1ヶ月で約1%ずつ減ることになります。カルシウムが余分に排出されることで、人間の尿道結石という病気と同様に、尿再生装置でも同じ状態が起こり装置が詰まるトラブルが発生しています。この点を解決する装置の開発が今後の課題のようです。
宇宙船で尿を飲料水に再生する装置
© JAXA
2011年1月20日に、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられたH2Bロケットには、無人補給機「こうのとり」2号機が搭載されており、そこには国際宇宙ステーションで使用する飲料水が含まれました。打ち上げ後、宇宙飛行士がロボットアームを遠隔操作して、こうのとりを国際宇宙ステーションにドッキングさせます。輸送物資の総計5.3t中、飲料水の量は80kg。その他には食料、生活用品、日本実験棟で使用する機器が含まれていました。この飲料水は種子島宇宙センターの水道水を精製・殺菌したものになります。物資補給後は物資が入っていた空きスペースに廃棄物を搭載し、3月末には分離して大気圏に突入させました。これにより廃棄物はこうのとりごと燃え尽きました。
地球の場合、汚れた水は下水に流しますが、下水は宇宙ステーションにはありません。水洗トイレでもないため流すこともできません。水は貴重なため再利用した水は飲料のみに使われ、宇宙ステーションで洗濯もしません。最新式のろ過装置を通してできたきれいな水をつくる高度なリサイクル技術は、大災害のときの飲み水の確保に活用できると期待されています。また、 水は酸素をつくるもとにもなることから、人間が生きてゆくために欠かすことができない、酸素を作り出す技術も開発されています。人間が宇宙に住むためには、宇宙空間に人類の故郷である「地球」をつくらなければなりません。国際宇宙ステーションは、言わば地球を回っている「小さな地球」というわけです。
国際宇宙ステーションに食料等の物資を輸送する様子
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