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第5回 CORE×TELSTAR「ハイブリッドロケットエンジンの性能を確かめるために必要なこと」

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ハイブリッドロケットの製作を行っている学生団体、「CORE」。TELSTARメンバーともつながりがあり、「CORE×TELSTAR」コラボ企画が始動しています!全8回にわたり、COREの持つハイブリッドロケット技術を分かりやすく中高生の皆さんにご紹介します。

 

第5回は「ハイブリッドロケットエンジンの性能を確かめるために必要なこと」

 

製作したエンジンに実際に燃料と酸化剤を供給して、エンジンの性能を確かめる試験を燃焼試験といいます。燃焼試験を行う際は、試験の前に「実験計画書」、試験の後に「地上試験報告書」を書く必要があります。今回はそれぞれどのような項目を書く必要があるのかについて説明していきたいと思います。また燃焼試験当日の動きについても詳しく説明していきますよ!


「COREで活動したい!」など連絡したい方は、
ホームページのお問い合わせや、TwitterのDMでお待ちしております。


目次


実験計画書

燃焼試験を行う前には必ず「実験計画書」という書類を製作します。これは安全に燃焼試験をするためにメンバー全員、顧問の先生、そして試験場を管理する方が把握しておくべきことを記載します。

 

記載内容は大きく分けて4つあります。

1つ目は試験する対象であるエンジンの概要です。CADで設計したエンジンの外観や使用した部品、燃焼試験前に行う破壊制御試験の結果を示します。モーターケース内の圧力が異常に上がったとき、ノズルを固定する板が破壊される破壊制御というものが働きます。エンジンを団体で自作している場合、これが正常に働くかを確かめる破壊制御試験が重要です。このほかにもモーターケース、タンクの耐圧試験を行う場合もあり、試験結果を示すことで安全性を証明します。

 


2つ目はGSE(
Ground Support Equipment)というハイブリッドロケットに酸化剤を供給をする設備の概要です。GSEは酸化剤である亜酸化窒素、点火剤である酸素、GSE内の空圧弁を動かすために使う窒素のラインから構成されています。エンジンは激しい燃焼を伴います。さらに亜酸化窒素の取り扱いには注意しなくてはならないため、これらの安全をどう管理するかを示します。


3つ目は安全距離です。ロケットは高圧力がかかると爆発する危険性があります。これを踏まえて、仮に爆発してしまったとしても実験を行う人の安全を保てる距離、安全距離を計算し、記載する必要があります。


4つ目は燃焼試験当日に参加するメンバーの名前、所属、役割、また責任者の緊急連絡先を記入します。

燃焼試験当日の運用

燃焼試験当日、燃焼班はロケットに酸化剤を供給する、点火をするなど重要な仕事を行います。高圧ガスや可燃物を扱うので、十分な準備と安全管理が大切になってきます。


ベストな服装は?

基本的に、汚れてもよく、動きやすい服装が良いです。フードや紐のついたパーカー、スカートなど邪魔になるものは厳禁!靴はスニーカーでも良いですが、足の甲に固いプレートの入った安全靴がベストです。


燃焼試験当日の流れ



燃焼試験当日は、上の図のように進めていきます。ロケットを打ち上げる準備をするだけでも一苦労なんですね…!ロケットの打上げには危険が伴うので、安全確認に1番時間がかかっているそうです。


地上試験報告書

燃焼試験が終わったら「地上試験報告書」という書類を作成します。記載内容は4つあります。


1つ目は実験装置についてです。特にエンジンを固定する燃焼架台、計測機器について詳細に記載します。またエンジンを自作した場合は、モーターケースとタンクの破壊制御が正しく働くかを調べる実験を行います。まず水をモーターケースまたはタンクの内部に手押しポンプで注入し、予定圧力に達した時点から一定時間放置します。破壊制御機構(ノズルを固定する板が破壊される)がある場合は、そこからさらにポンプでノズルを固定する板が破壊するまで水をいれていきます。このときかかる圧力を後の「実験結果」で示すことで、安全性を証明します。


2つ目は実験シーケンスです。いつ何の作業をしたのか、以下の例の通り詳しく記入しましょう。 


3つ目は実験時の様子についてです。実験時の作業の様子や燃焼時の様子の写真を記載します。実験時は頻繁に様子を撮影する必要があるので、撮影係をひとり決めておくことがおすすめですよ!


4つ目は実験結果です。実験結果には燃焼試験で得られた実験データとモーターケースとタンクの耐圧試験結果を記載します。燃焼試験の実験結果は、時間と推力(燃料を燃焼し、勢いよく噴出した時の反作用)の関係性をグラフにして示した推力履歴を中心に記載します。また燃焼時間、トータルインパルス(燃焼持続時間中にエンジンが出す推力を合計(積分)したもの)、最大推力、平均推力(トータルインパルスを燃焼持続時間で割った値)について記載します。ここで設計値と実測値の差異も比較しましょう。健全性試験の結果は
、加えた圧力、保持時間、リーク(漏れ)があったかどうか、破壊制御が作動した時の圧力について記載します。


発生する可能性のある危険を事前に把握するために作成する「実験計画書」、実験結果とエンジンの安全性、そして次の試験に生かすために作成する「地上試験報告書」、どちらも安全第一に活動を行うためにはとても重要だということが分かりましたか?正しく書くようにしましょう!

 

もう少し詳しく知りたいそこのあなた!COREのメンバーが、ハイブリッドロケットを始めたい中高生のために作った資料です。ぜひ活用して下さい!

地上燃焼試験について
燃焼班の当日の運用



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