はやぶさ２帰還へ① ～はやぶさ２記者会見（2月20日）～
2019年11月13日に「小惑星リュウグウ」を出発し、地球への帰還を始めた「はやぶさ2」。2020年2月20日、そんなはやぶさ2について、JAXAの記者会見がありました。今回は、その内容をリポートします！
はやぶさ2
はやぶさ２とリュウグウ
credit: 池下章裕
はやぶさ2は小惑星リュウグウの探査とサンプルリターンを目的として2014年に打ち上げられました。2018年6月にリュウグウに到達し、タッチダウンして小惑星の砂を集めるサンプルの回収やローバーの放出などを行いました。2019年11月13日にはリュウグウの探査を終え、現在は2020年末の地球帰還を目指して、現在、航行中です。
はやぶさ2について詳しくは「TELSTAR5号」をチェック！
地球帰還までのスケジュール
帰還スケジュール
credit: JAXA
地球帰還までのスケジュールは主に4つに分かれています。リュウグウ出発後、2020年2月までイオンエンジンを運転し、一度充電のために休止を挟みます。同年5月に第2期として再びイオンエンジンの運転をします。地球に近づく10月からは化学エンジンを使用してカプセルの放出に向けて地球への接近を行う予定です。
イオンエンジンとは？
イオンエンジンの配置
credit: JAXA
はやぶさ2が宇宙空間を進むためにメインの役割を果たすのがイオンエンジンです。通常の探査機は、燃料を燃やす化学エンジンで進みます。一方で、はやぶさ2は、電気の力でガスを噴射するイオンエンジンで進みます。イオンエンジンの燃料はキセノンガスで、今回のイオンエンジンの運転期間が終わっても、まだガスが60％ほど残っていることがわかっています。
はやぶさ2に搭載されているイオンエンジンは4つあり、通常は1~3つを使い、1つはバックアップとして残しています。1つがバックアップになっている理由は、エンジンを動かすための電源が3つしかないからです。エンジンの電源は一度接続すると、接続を変えることはリスクを伴うので、イオンエンジンBはバックアップとして残され、通常使われていません。しかし、今回の第1期運転期間中には、第2期の運転期間に向けて、このイオンエンジンBがバックアップとして、正常に動くのかどうかの試運転を打ち上げ直後以来はじめて行いました。
第1期イオンエンジン運転の結果は？
記者会見では、2019年12月3日から2020年2月20日にかけて、第1期イオンエンジン運転の成功が報告されました。この期間には、探査機がどこを飛んでいるのかを測定する精密軌道推定、トリム運動といわれる軌道微修正が行われました。今回のイオンエンジンの起動時間は、試運転を含め、881時間に及びました。この成功は、繊細な試運転の実行にあります。
1つ目の試験は、バックアップイオンエンジンBの性能確認に加え、他の3つのイオンエンジンの動作確認です。イオンエンジンは、1年半もの間停止状態にありました。さらに、リュウグウにタッチダウンする際、エンジンの隙間に砂が付いてしまった可能性があります。そのような状態で1.5KVの高電圧に耐え、正常に機体を加速させる事ができるのか確認する必要があります。イオンエンジンA、C、D全ての組み合わせで正常に運転できるのかを試験しました。
2つ目の試験は、ジンバルの対応の確認です。イオンエンジンはジンバルという台に設置されています。これは2軸方向に動かす事でトルクという回転する力が発生します。
また、はやぶさ2には、リアクションホイール(RW)という機体の姿勢を制御するコマのようなもが取り付けられています。太陽光圧によって、機体が傾いてしのまうのを防ぐため、ホイールが回転します。ただし、ホイールの回転数が上がり続けてしまうあめ、化学燃料を用いて回転数を下げなくてはなりません。しかし、イオンエンジンによるトルクの発生によって、太陽光圧によって傾いた機体を元の姿勢に戻す事ができます。これをアンローディング機能と言います。この機能によって、ホイールの回転数を維持する事が可能となり、化学燃料の節約が実現できます。
アンローディング機能のイメージ
編集部作成
試運転では、復路でこのアンローディング機能が正常に働くかどうかを試験しました。
これらの試験が全て成功し、はやぶさ2は地球帰還にむけて第一歩を踏み出す事に成功しました。
私達がはやぶさ2に再会できるのは、今年の冬になりそうです。あと少しの辛抱ですね！頑張れはやぶさ2！
（西川 俊吾・嶌村 美来）
