衛星で分かる動物の真実
ツバメなどの渡り鳥が日本にいない間、どこで何をやっているか疑問に思ったことはありませんか? 野生動物の研究は動物を観察するところから始まります。しかし研究者にとって、動き回る動物の観察は難しいことです。そこで、バイオロギングという調査方法が誕生しました。
バイオロギングとは何か
バイオロギングは、bio loggingと英語で書き、その名の通り動物の行動や生態を記録し調査する方法です。具体的に言うと、生物に小型記録計を取り付けて動物の行動などを記録します。この追跡システムの一つに、人工衛星を使ったアルゴスシステム(略してアルゴス)があります。
記録計を取り付けたホホジロザメ
出典:国立極地研究所:マグロやホホジロザメの泳ぐ速さや回遊の規模は海生哺乳類のそれに匹敵する│研究成果│国立極地研究所 (nipr.ac.jp)
アルゴスと衛星
もともとアルゴスは、海洋のデータを衛星を介して伝送するために開発されました。海水温などの海洋のデータは気候や気象を理解する上で欠かせないためです。これらのデータは、海面などからデータを観測する機器を積んだブイ(注釈)で観測します。バイオロギングでは、ブイの代わりにアルゴシス送信機を動物の体に取り付けます。得られたデータは、衛星に伝送されます。するとすぐにデータは、衛星から地上に向け送信されます。同時に衛星は受信したデータを記録装置に保存しておきます。よって、衛星の視野範囲に受信局があればデータをすぐに受信することができますが、受信局がない場合でもデータが消えることはありません。
出典:気象庁ホームページ (http://www.cubic-i.co.jp/argos/mechanism.html)
図「海洋気象ブイの形状」(気象庁 | 海洋観測の知識 漂流型海洋気象ブイロボット (jma.go.jp))
出典:気象庁ホームページ (http://www.cubic-i.co.jp/argos/mechanism.html)
図「気象庁観測船からの投入風景」(気象庁 | 海洋観測の知識 漂流型海洋気象ブイロボット (jma.go.jp))
出典:気象庁ホームページ (http://www.cubic-i.co.jp/argos/mechanism.html)
図「漂流する海洋気象ブイ」(気象庁 | 海洋観測の知識 漂流型海洋気象ブイロボット (jma.go.jp))
アルゴスシステムのイメージ
マグロが時速80㎞で泳ぐは古い
バイオロギングで分かったことの一例として、マグロの時速があります。以前に『ネイチャー』という科学雑誌で、キハダマグロの最大時速は75㎞と報告されたことがありました。他にも時速90㎞だったという論文もでており、その情報が広まってしまったようです。しかしバイオロギングの結果、平均時速は7~8㎞ということが分かりました。またそこから、最大時速は20~30㎞ほどだと推測されています。
注釈
水面上に浮かんで位置を標示する浮体のこと。
こちらの記事は2020年より新しくTELSTARに入ったメンバーたちによる記事です。
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