イベント・ホライゾン・テレスコープ(EHT) 〜ブラックホールの撮影〜
様々なアニメやSF小説に登場する「ブラックホール」。みなさんも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。2019年、国際的プロジェクト「イベント・ホライゾン・テレスコープ(EHT)」によって史上初めて撮影されたブラックホールが大きな話題になりました。
ブラックホールとは?
ブラックホールは光を発しない、目に見えない天体です。1915年に一般相対性理論から当時の天文学者カール・シュヴァルツシルトがその存在を理論的に証明しましたが、一般相対性理論を完成させたアインシュタイン自身は実際には存在しない天体と考えていました。
快挙!ブラックホールの撮影
2019年、EHTは地球から5500万光年先にあるブラックホールの撮影に成功しました。
遠くの天体をクリアに撮るためにはサイズが大きい望遠鏡が必要です。EHTでは世界中の8つの電波望遠鏡が同時に観測したデータを合成させることで、仮想的に地球規模の望遠鏡を作り上げました。
このプロジェクトでデータとして使われているのは、吸い込まれていくブラックホール周辺のガスなどによって出された光(電波)です。研究チームはこの電波を観測することでブラックホールの形が浮かび上がると考えました。今まではブラックホールそのものを観測しようと試行錯誤していましたが、その周りを見るという発想の転換が今回のプロジェクトを成功に導いたのです。
[上]ブラックホール自体は光を出していませんが、周りの光の波が地球方面(右)に向かっているのがわかります。[下]地球から見るとブラックホールの部分だけ黒く見えます。(Credit: Nicolle R. Fuller/NSF)
相対性理論の向こう側へ
この結果からブラックホールの存在が証明されただけでなく、このプロジェクトで使ったデータ解析プログラムの改善点が見えてきました。このプログラムが改善されれば、今回の画像では映らなかった、ブラックホールから噴き出すガス(ジェット)の観測も期待できます。実はこのガスは、一般相対性理論では否定されています。もし今後の撮影でジェットが写れば、相対性理論を超えることになります。
銀河とブラックホールの関係はまだ謎に包まれています。いつか解明されるのが楽しみですね。