野口聡一宇宙飛行士JAXA退職会見 次世代への想い語る
2022年5月25日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は6月1日付で同機構を退職する野口聡一宇宙飛行士(57)についての記者会見を開催しました。
野口さんは1996年、宇宙飛行士候補生としてJAXAの前身NASDAに入社しました。初飛行は2005年、スペースシャトル「コロンビア号」事故後初の飛行となる「ディスカバリー号」に搭乗しました。その後、2009年から2010年には日本人初となる、船長を補佐するフライトエンジニアとしてソユーズ宇宙船に搭乗。2020年から2021年には、アメリカ人以外で初めて民間のクルードラゴン宇宙船に搭乗し、計3回の宇宙飛行を行いました。また、宇宙飛行士として活躍する傍ら、2021年には東京大学の特任教授に着任し、宇宙飛行士という経歴を活かした「当事者研究」にも取り組んでいます。
記者会見では、まずJAXAの佐々木宏理事が「野口飛行士はパイオニア・挑戦者として常に牽引する立場にあった。これからも日本・世界の宇宙開発に大いに貢献してほしい」と語り、JAXAとしては高く評価しており、新しい挑戦を応援していく旨を述べました。
次に野口さんは、退職の理由について「3回目の宇宙飛行を終えたころ、後輩宇宙飛行士、現在選抜が行われている未来の宇宙飛行士に道を譲りたいと思った」と話しました。また、中国の思想家・老子の「功遂げ身退くは、天の道なり」という言葉を引き、「昔から、仕事を成し遂げたら次の人のために身を退くのが正しいやり方だと言われている。この言葉も退職を決断するきっかけになった」と述べました。気になる今後については、「研究機関での活動を中心に、ひとりの民間人という立場で宇宙を盛り上げていきたい」と語りました。
野口さんは未来を担う人々への想いも語り、「今後は文系・理系や健常者・障がい者の垣根を超えた、総合知を備えた人材育成教育にも尽力したい。子どもたちには、目の前の世界だけではない新しい世界に行けること、宇宙がそのきっかけになっていることを感じてほしい。コロナ禍で閉鎖感に苦しんでいると思うが、宇宙がそれを打破するきっかけになればいいなと思っている。宇宙を目指す子どもたちが、明るい未来への夢を持ってもらえるような活動をしたい」と述べました。宇宙を目指す次世代の若者へは、作家・宮沢賢治の「諸君の未来圏から吹いて来る 透明な清潔な風を感じないのか」という言葉も贈りました。
花束を受け取り、笑顔で応える野口さん(撮影=加治佐匠真)
今回JAXAを退職する野口さんですが、「今後月に行く可能性は1~99%」と述べ、再び宇宙飛行を行う可能性も示唆しました。今後の民間人としての活動に注目です!
野口さんの挨拶文・記者会見動画はこちら(JAXA公式サイトにリンクします)
(文・取材/加治佐匠真、取材/千葉俊彦)