さて、毎年の恒例企画となった「宇宙ゆく年くる年」。宇宙開発から天文まで、2016年の宇宙ニュースを振り返ります。
それでは1月からスタートです!
1月 第9惑星が存在する可能性が示される
シミュレーションで導き出された第9惑星の軌道。真ん中の小さな黄色の輪が海王星までの太陽系。 Image Credit:Caltech/R. Hurt (IPAC)
カリフォルニア工科大学などの研究チームが、太陽系第9惑星が存在する可能性がある、という研究を発表しました。シミュレーションによると、第9惑星の軌道は他の惑星と比べると大きく外れていて、1万年以上もの時間をかけて太陽の周りを回っているようです。
前々から第9惑星があるのではないか、という話しはありましたが、遠くの太陽系惑星の存在に驚いた方も多かったのではないでしょうか。
2月 重力波初観測
重力波を発生させた連星ブラックホールのイメージ Image Credit:The SXS (Simulating eXtreme Spacetimes) Project
2016年2月の深夜、衝撃的な発表がありました。「LIGO」という4km離れた地点にそれぞれ鏡を置いた観測施設で、重力波が起こしたわずかな変化を初めて観測することに成功したのです。
重力波とは、ブラックホール同士の衝突などで発生する波のことです。アインシュタインがその存在を予測したのはちょうど100年前の1916年。節目の2016年に人類が新たに手に入れた「重力波天文学」がこれから先、まだ見たことのない宇宙を私たちに教えてくれることでしょう。
3月 X線天文衛星「ひとみ」との通信が途絶える
X線天文衛星「ひとみ」 Image Credit:JAXA
X線天文衛星「ひとみ」は、2月17日にH-ⅡAロケット30号機で打ち上げられました。しかし、3月26日に電波が受信できなくなり、通信が途絶えてしまいます。打ち上げ以来、特に目立ったトラブルを聞かなかった分、ショックを受けた方も多かったと思います。
その後、JAXAは衛星の復旧を目指して原因究明に努めていましたが、4月28日に運用を断念しました。
4月 スペースXのファルコン9ロケット、船への着地に初成功
ファルコン9ロケット第1段着地寸前の様子 Image Credit:SpaceX
米国を中心に数を増やしつつある宇宙ベンチャー企業。その代表格が、実業家イーロン・マスクが率いるスペースXです。スペースXは、衛星や補給船を打ち上げたロケットを逆噴射で着地させることによってロケットを再利用し、打ち上げの低コスト化を目指しています。すでに陸への着地には成功していて、4月には船への着地に成功しました。ロケットは基本的に安全を確保するために海の方向に向けて打ち上げるため、陸よりも船に着地したほうが、効率が良いのです。
このように勢いがあるスペースXですが、9月にはロケットの爆発事故を起こしています。慎重にその活動を見守っていきたいものです。
5月 国際宇宙ステーション(ISS)の窓にデブリが衝突
ISSのモジュール「キューポラ」の窓のデブリ衝突痕 Image Credit:ESA
このニュースは写真のインパクトが大きかったように感じます。私の他にも、漫画、アニメの『プラネテス』のワンシーンを思い出した方がいたのではないでしょうか。
デブリの全てが危険というわけではなく、例えば低軌道のデブリは自然に大気圏に落ちて燃え尽きるため、回収する必要がありません。ただ、この画像のように軌道によっては、ステーションや衛星にぶつかるリスクはあります。
6月 JAXAがひとみの事故調査報告書を提出
6月8日に行われた第3回宇宙開発利用部会 X線天文衛星「ひとみ」の異常事象に関する小委員会 Image Credit:nvs-live.com
6月14日、JAXAが3月に事故を起こした「ひとみ」の詳細な事故報告書を宇宙開発利用部会に提出しました。事故の調査が行われた結果、ひとみは機体の制御のためのエンジンに関して数値が間違えて入力されていたことなどから、高速で回転してしまい、制御不可能になってしまいました。また、この報告書では事故そのものだけではなく、ISAS(宇宙科学研究所)の組織体制についても詳しく掘り下げられ、見直しの方針が打ち出されたことが話題になりました。
上半期編はここまでです。下半期編に続きます!
(TELSTAR宇宙情報 @telstar_news 管理人 土谷純一)