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8号特集・宇宙建築 研究者十亀昭人に迫る

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東海大学で宇宙建築について研究されている、十亀昭人准教授にお話しを伺ってきました。8号は掲載しきれなかった分も含めたロングインタビューです。

宇宙建築研究者 十亀昭人准教授



ソガメ折りを手に持つ十亀昭人准教授

――先生が大学生の頃から宇宙建築に取り組んでいたのですか?

私は、大学は建築学科でした。宇宙建築をやろうと思った理由は、その頃”宇宙の建築家”とも言われていた三浦公亮先生の、ミウラ折りをテレビで見て感動したからです。

大学4年で宇宙建築をやりたくなり、卒業設計では『重港』という作品を設計しました。
月面でドーナツ状の円周部が回転することにより、月面重力と遠心力が合わさり、重力がかかるというものです。外側ほど地球の重力に近くなるため、例えば月から地球に帰るときなど、重力に慣れるという意味でリハビリに使うこともできます。
当時(20年前)は宇宙建築などあまりメジャーな研究分野でなく、詳しい先生もいなかったため、卒業設計も学科の先生方に「なんだこれは!」と言われてしまいました。

――大学を出た後はどうされたのですか?

その後、建設会社に7年間勤めました。宇宙建築と聞くと、月面や火星に大きなプラントが広がる光景などを想像する方も多いと思いますが、そのような計画はバブル時代に、大手建設会社がいくつか発表をしていて、私も7年間そういった業界で働いていました。宇宙建築の啓蒙という意味では良いことだと思いますが、技術的に問題も多く、そのうちにもっと真剣に学問として宇宙建築をやりたくなりました。しっかりと基礎研究をするには企業ではなく大学のほうがいいと思ったんです。

――先生が取り組んでいる研究を教えてください。

展開構造物の研究をしています。展開構造とは、小さく折り畳んだ構造物を展開することで、大きな構造物を構築するための技術です。日本には折り紙の文化がありますよね。なので、展開は日本が貢献できる分野だと思います。

こちらが、私が考案したソガメ折りです。



これを利用した研究が2つあります。

一つ目は小惑星捕獲です。
NASAの小惑星捕獲のイメージ動画があるのですが、どうやって捕獲するためのものを折りたたんで持っていくか、展開するのかということころを描いていません。柔らかい素材であったとしても必ず開くことが出来なければならないため、整然と折りたたまれていなければなりません。
捕獲に使用する大きな筒状の構造物にソガメ折りを利用することにより、折り畳んだ状態で筒を小惑星まで持っていくことができます。
これによって、資源の宝庫である小惑星を、有力な資源として利用できるのです。

[動画] ソガメ折り小惑星捕獲

二つ目はデブリ(宇宙ゴミ)シールドです。
今のISS(国際宇宙ステーション)は1cm以下のデブリは防御でき、10cm以上のものは地上から観測ができます。じゃあその間の大きさのデブリが当たったらどうなるのでしょうか。そう、場合によっては中にいる宇宙飛行士の命に関わるような事故につながってしまうかもしれないのです。
そこでISSの周りにデブリシールドを取り付けることによって、1~10cmのデブリも防ぐ、あるいは1cm以下に砕いて小さくすることができます。
デブリシールドも小惑星捕獲の場合と同じく、ISSそのものの半径より大きな物を折り畳んで小さくして持っていく必要があるため、ソガメ折りを使用できると考えています。

展開構造以外の主な研究に、宇宙避難があります。
例えば地上だとオフィスビルなどで火災があったときの避難の方法などは確立され、何十年にもわたって技術が蓄積されていますが、ISSなどの宇宙施設で人が3次元的に移動できる場合の災害の避難シミュレーションは地上ほど確立されていません。今のISSのように数人ではなく、将来、多くの人が宇宙に住むようになったら、避難の方法も変わってきます。
また、NASAでは災害が起きたら一旦電源を落とすというルールもあるため、暗い中で触っただけで避難の方向がわかる手すりなども必要となるでしょう。このようなことも踏まえて現在日本防災研究所の佐々島暁さんらと研究に取り組んでいます。

実験的に色々な避難方法を試すために、大学のプールの中に私たちが作ったISSと同じサイズのフレームを入れ、学生が海パン姿で研究を行っています!

――宇宙建築はすごく幅が広いのですね?

その通りです。
一言で宇宙建築といっても、ゼネコンがやっていたような巨大な構想から、展開構造物の研究、設備、環境、構造、材料・・・と、様々な分野の研究が求められていますね。

――最後に先生の目標を教えてください!

確率は低いかもしれないけれど、恐竜が絶滅したように地球が今後どうなるかはわかりません。地球に何かあった時、例えば宇宙に拠点があれば、生命や文明をまもるという意味で、未来へ人類が築いてきた英知がつながる可能性があります。そんな研究がちょっとずつでもできたらと思っています。
また、宇宙から建築に、建築から宇宙に、興味を持ってくれる人が増えてほしいですね。宇宙建築学はこれからの学問なので、学問としてのチャンスがいっぱい広がっていて、始めた人がトップになれる可能性があるんです!

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画像提供元:十亀昭人准教授
東海大学工学部建築学科准教授 十亀昭人
東海大学湘南キャンパス 十亀研究室(宇宙建築学教室) http://homepage3.nifty.com/arch2003/index.html

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