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【23号うちゅうけん!スピンオフ】ロケットの地産地昇!?(宇宙へ飛び立て編)

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『TELSTAR23号』の「うちゅうけん!」コーナーで、鹿児島ハイブリッドロケット研究会の中心メンバーとして活動されている、鹿児島大学工学部機械工学科片野田研究室をご紹介しました。スピンオフ宇宙へ飛び立て編では、冊子でもご紹介した、開発を始めたきっかけと、鹿児島で開発を行う利点・やりがいの2点を深掘りしてご紹介します。

(冊子を読むにはコチラをクリック)

 

衛星計画の中断とハイブリッドロケット開発の開始

今回取材させていただいた片野田洋先生が、ハイブリッドロケットの開発を始めた時期は2016年4月。きっかけはそのまた9年前、2009年から始まった、鹿児島大学の超小型人工衛星(KSAT)プロジェクトにさかのぼります。初号機は2010年のH-IIAロケット20号機、2号機は2014年のH-IIAロケット23号機によって打ち上げられ、3号機も開発の予定でした。しかし、開発開始直前に、鹿児島大学に所属していたプロジェクトリーダーの先生が鹿児島大学から転出し、プロジェクトが中断してしまいます。片野田先生も参加していたこのプロジェクトは、鹿児島人工衛星開発協議会というNPOを主体に進められていました。しかし、小型人工衛星を開発しなければ、NPOの存在意義がなくなってしまいます。メンバーのモチベーションが下がる中、2015年に団体を解散するか否かを決める重要な会議が開かれることになりました。先生は、メンバーを繋ぐ次のプロジェクトを立ち上げようと、代替となる研究テーマを調べました。そこで出会ったのが「ハイブリッドロケット」という存在です。先生は、ロケットなら自分の専門分野である流体力学に近く、さらにハイブリッドロケットなら大学の中でも実験ができると考え提案しました。

「次のリーダーが来るまでの繋ぎでいいから、やってみないか。」

こうして、鹿児島でのハイブリッドロケット開発は始まったのです。

 

肝付町との連携

ハイブリッドロケット開発は、鹿児島人工衛星開発協議会ではなく、先生の研究室を主体として行うことになりました。協議会からは、年間数十万円相当の研究資材が援助されることになりました。2017年1月、先生は「鹿児島ハイブリッドロケット研究会」を立ち上げます。研究会には片野田研究室の学生や鹿児島大学の教員、鹿児島県内にある第一工業大学の学生と教員、県内の技術者が参加し、立ち上げたときの総勢は25名でした。そんなとき、鹿児島大学理工学研究科と肝付町が包括連携協定を結ぶことになりました。協定の目的は、幅広い分野で協力しながら、地域社会の発展と人材の育成に寄与することにあります。

 

 

協定締結時、肝付町には困っていることが4つありました。

 

1 廃校の利活用

2 交通インフラの整備

3 宇宙ロケット(ロケット打上機数の減少による町の寂れ)

4 ローカルエネルギー、特に水力発電の活用

 

です。必然的に、研究会はロケットに関係する「3」に協力することになりました。研究会には肝付町役場の職員が1名在籍しており、肝付町で実験をする際には小道具の調達などを支援します。研究会の活動は、「肝付町と連携して」行っている活動なのです。また、研究会の実験は、内之浦宇宙空間観測所の所長である峯杉賢治先生と共同で行っています。JAXAの施設内で実験を行う際には、毎回の安全審査に通ることが必要です。この審査は峯杉先生との共同研究という形で受けることができるのです。

 

現時点での目標

プロジェクトの最終目標は、小型人工衛星を軌道投入することにあります。それは、もともとこのプロジェクトは小型人工衛星が発端だからです。中間目標は、高度100km、つまり宇宙空間まで弾道飛行するロケットを開発することです。

 

鹿児島で開発を行う利点・難点

鹿児島でロケット開発を行う利点は、ロケットエンジンの燃焼試験を行うことができる場所が肝付町内之浦にあるということです。しかも、内之浦は日本のロケット開発の聖地です。燃焼試験を行うと、とても大きな音が出ます。最悪の場合破裂してしまうかもしれません。安全といわれるハイブリッドロケットですが、危険は伴っているのです。このように危険を伴う燃焼試験は、どこでも実施できるわけではありません。しかし、内之浦には約60年前からロケット射場があるために、住民のロケット開発に対する理解が深く、燃焼試験を行うことができます。このような住民との信頼関係は、JAXA、ひいてはJAXA設立以前から内之浦の住民と関係を深めてきたISAS(宇宙科学研究所)の人々が積み上げてきたものであり、一朝一夕に築けるものではありません。

 

難点は今のところありません。当初部品の加工に懸念がありました。しかし、鹿児島県内に精密な加工ができる会社が多かったため、県内で手に入らないCFRP(炭素繊維強化プラスチック)やGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を除き、ほぼ全ての部品を鹿児島県内の会社で製造しています。

 

燃焼試験を行う内之浦宇宙空間観測所のKS台地

燃焼試験を行う内之浦宇宙空間観測所のKS台地

 

鹿児島大学構内の燃焼試験設備/小型エンジンの燃焼試験はここで行うこともある

 

鹿児島でロケット開発を行う理由

鹿児島には種子島宇宙センターと内之浦宇宙空間観測所、2カ所の射場があり、間近で打上げを見学することができます。その点他県と比べて恵まれていますが、これは「見学できる」という話であり、鹿児島県外で設計・製造されたロケットが搬入され、JAXAやIHI、三菱重工が打ち上げるだけです。県民にとってロケットはいわば「関わり合えない」存在なのです。先生は、せっかく県内の大学に工学部があるのだから、ロケットに関して自分たちでできることがあるはずだと考えました。また、KSATプロジェクトに関わった経験から、宇宙は自分たちの手が届くところにある、とも感じたそうです。そこで、KSATに続く、大学・民間主導の宇宙開発プロジェクトを鹿児島で行おう、ということを動機に、「見ているだけではつまらない」という思いでロケット開発を行っています。

 

 

宇宙へ飛び立て編はいかがでしたか?次回の初号機飛翔編では、鹿児島ハイブリッドロケット初号機の打上実験を中心に取り上げます。お楽しみに――

 

文/加治佐匠真

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