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宇宙へ!夢をつなぐ宇宙エレベーター ~宇宙エレベーター実現に向けて~

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渕田さん(左) 大塚さん(中央) 大本さん(右)


宇宙エレベーター開発とは?

地上と宇宙をつなぐ巨大なエレベーター。なんとその長さ約10万km!

そんな巨大なエレベーターを建設するために、どのような研究開発を行っているのでしょうか?

今回は、第2部「宇宙エレベーターの実現に向けて」、実際に大林組で研究開発されている方々にインタビューをしてきました!

宇宙エレベーターは、実現可能なのですか?

ー 石川さん 

 実現できると思っています。ただ、非常にチャレンジングなプロジェクトです。まだまだ技術開発をしなければならないところがたくさんあり、現在我々の会社がプロジェクトを進めています。その技術開発は、他の会社、大学との協業がほとんどで基礎的なところから少しずつ達成していこうと試みています。課題は色々とあるのですが、ケーブルの長さと強度、クライマーのメカニズム、クライマーへのエネルギー供給方法、この3つについてよく話しています。他には、ケーブルを切れないようにする方法や、隕石やスペースデブリの衝突へ の対処法といった安全面についての問題もあります。
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石川さん

長く強いケーブルを作るには?

ー渕田さん 

 ケーブルの材料としては、強さと軽さを備えたカーボンナノチューブ(CNT)が考えられていますが、今のところ長さ数㎝程のものしかありません。現状としては宇宙エレベーターを作るのに十分な長さのものはないので、より糸形状(CNTの繊維をねじり合わせた形状)のものを用いて、宇宙で実験しています。この形状のCNTだと、今のところ、我々の設計で必要なCNTの強度の1000分の1程度のものしかできていませんが、ゆくゆくは強度を上げて10万kmのケーブルを作りたいと考えています。

図1 カーボンナノチューブ構造(大林組提供)

宇宙空間でのCNTの実験とは?

ー渕田さん 

 より糸形状のCNTを、地上400km付近を周回する国際宇宙ステーション(ISS)の船外に置いて、どの程度損傷するか調べる実験をしています。CNTの損傷具合を把握するため、電子顕微鏡で観察したり、強度が落ちていないか測るために強度実験を行ったりしました。結果として、CNTには損傷がみられました。これはISSが周回する地上400km付近に存在する原子状酸素の衝突が原因として考えられます。よって将来、宇宙空間でCNTを用いる際には、CNTを保護するものが必要だと考えています。

10万kmのケーブルを走行するクライマ―は出来るのですか?

ー大本さん

 私達の会社では、大学と一緒にクライマーの研究開発を行っています。その取り組みの一つとして、毎年、宇宙エレベーター競技会を一つのターゲットとして開発を進めています。初めて参加した年は、ケーブルをつたって上がるのも困難でした。しかし、最近では確実に200m程度まで上がれるようになり、その距離をクライマーで何回往復できるかということも検証できるようになりました。実際の宇宙エレベーターの開発となると規模が違い、まだ難しいところがあります。しかし、こういった原理的なところを拡張していけば実現するということは分かってきました。

図2 宇宙エレベーター競技会の様子(大林組提供)

クライマーにどのようにエネルギーを送るのですか?

ー大本さん

 現在試験では、クライマーに積んだバッテリーを利用してエネルギーを供給しています。しかし、バッテリーを積むとかなりの重量になるため、エネルギーを外部から供給する方法を検討しています。たとえば、宇宙で太陽光発電した電力を非接触で送る無線電力伝送や、発電した電力を直接ケーブルに流してクライマーに供給する方法が考えられています。

スペースデブリに対する対策は?

ー大塚さん

 スペースデブリは、猛烈な速さ(低軌道では秒速7~8km、静止軌道では秒速3km)で地球を回っているため、衝突した際の破壊力は非常に大きいです。そこで、デブリ対策としては、目の前のデブリを破壊するのではなく避ける方法をとろうと考えています。これは、デブリを破壊すると更に細かいデブリが増え、衝突するリスクが増加するからです。

 デブリを避ける方法として2つの手段が考えられています。1つは、ケーブルが宇宙で動けるようところどころ小さなロケットのようなものをつけるという方法です。もう1つは、ローレンツ力(電流が磁場から受ける力)を用いて動かす方法です。地球の磁力線の中を横切っているケーブルに電流を流すことで、ローレンツ力を発生させてケーブルを動かそうというものです。

学生だったころ、宇宙に対してどのような想いを抱いていらっしゃいましたか?

ー大塚さん

 学生の頃、星がよく見える野辺山の方に行き天体観測をしていました。普通に空を見上げるだけでも綺麗なのですが、望遠鏡で星を見ると、まるでレンズの中の宇宙に自分が浮遊しているような何とも言えない感覚になるんです。それがとても印象的で記憶に残っています。また、宇宙物理学の観点で興味を持っていました。宇宙は膨張し地球や太陽が熱をどんどん発散しているのに、室内のように熱がこもることなく、逃げ場である空間が次々につくられています。それで、学生の頃から熱力学に興味があって、いざ自分が会社で働くようになり、最近の宇宙の研究の話など聞いていくと、いろいろ話が繋がりとても面白かったです。ですから、宇宙エレベーターを開発するにあたり、バックグランドとして宇宙への興味は非常に高かったです。

ー大本さん

 もともと漠然と宇宙の話を聞くことや、天文台に行くことが好きでした。学生の頃、航空宇宙や機械の分野が好きで整備士を目指していました。しかし、今は地上で建物をつくる会社にいます。結果的には、宇宙エレベーターに関われているので、自分の好きなことがあると何かしらの形で関われることがあると実感しています。

高校生に向けてのメッセージをお願いします。

ー石川さん 

 これからは、激動の時代になると思います。人工知能がどんどん進化して、将来的には人間の知能を上回ることもあるでしょう。そんな未来を生き抜くため、高校生の皆さんは、人工知能に負けないくらい斬新なアイデアで宇宙エレベーターのような難しい問題に挑戦していって欲しいです。

ー大塚さん

 大いに夢や好奇心を持ってもらいたいです。そして、一つの目標として自分が将来こうなりたいという強い想いを持って欲しいです。

ー渕田さん

 専門性を持つのも大事ですが、全体もみて欲しいです。壁をつくっている職人さんと家をつくっている職人さんがいるとしたら、家をつくっているって言える人になって欲しいです。ある一部分を見るのではなく、視野を広くして全体を見ることが大切だと思います。

ー大本さん

 高校生くらいの頃から、自分が好きなことを突き詰めるのはいいと思いますが、私はもっといろんなこと勉強しておけばよかったと今になって思います。実際、社会に出ると学ぶべきことが沢山あると感じます。皆さんも苦手な科目などあると思いますが、学生のうちから少しでもいいから取り組んで欲しいです。
   ▲渕田さん(左) 大塚さん(中央) 大本さん(右)

編集後記
いかがでしたでしょうか。
宇宙エレベーターが実現したら、誰もが宇宙に行けるような素敵な未来が待っていることでしょう。しかし、宇宙エレベーター実現にはまだまだ沢山の課題があります。1人では困難かもしれませんが、みんなで協力して一つ一つ解決していけば実現できるはずです。
熱い心をもって、明るい未来をつくっていきましょう。
未来をつくり出すのは、あなたです

 宇宙エレベーターのイメージ動画(大林組提供)は下記URLから閲覧可能です。
 URL)http://spacemgz-telstar.com/dcms_media/other





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