皆様、年末年始はどう過ごされてますでしょうか。
さて、毎年の恒例企画となった「宇宙ゆく年くる年」。宇宙開発から天文まで、2017年の宇宙ニュースを振り返ります。
それでは1月からスタートです!
1月 JAXAの超小型ロケット「SS-520」の打上げ失敗
SS-520 4号機の打上げの様子 Image Credit : JAXA
JAXAが挑戦した超小型・超軽量の衛星打上げロケットSS-520の4号機。第3段ロケットによる人工衛星の軌道投入に失敗しました。原因は、これまで実績のある第2段ロケットで電線が断線してしまったことでした。今回うまくいかなかった部分だけでなく、うまくいった部分もその原因を調査することで更なる改良を加えたSS-520の5号機が、2018年度初めに打ち上げられる予定です。一年越しの再挑戦に目が離せません!
2月 地球からわずか39光年、7つの地球サイズの惑星発見
太陽系からずか39光年の距離に7つもの地球サイズの惑星があることが確認されました。7つの惑星のうち3つが水の存在しうるハビタブルゾーンに存在することがわかりました。このTRAPPIST-1惑星系のポイントは、恒星と惑星の相対的な大きさが生命の誕生に理想的である点と、太陽系に近いため惑星の大気を調べることができる点です。惑星の大気を調べることで、生命体に必要な元素や化合物が惑星上に存在するかを調査することができます。
3月 SpaceX社初の再使用ロケット打上げ&着陸成功
SpaceXがついにロケット第一段の再使用に成功しました!これまで何度も第一段の着陸に成功していましたが、再使用ロケットの打上げと着陸に成功したのは初めてのことです。今後、ロケットを繰り返し利用することで大幅なコストダウンが期待されています。第一段の着陸だけでなく再使用も当然のこととみなされる時代が来ることを10年前に考えられた人は、果たしてどれほどいたのでしょうか。
4月 土星衛星「エンケラドス」に熱水噴出孔存在か
2017年4月13日に開かれた記者会見で、土星探査機カッシーニがエンケラドスから水素分子が噴き出していることを確認したと発表しました。この水素分子はエンケラドスに生命の熱水噴出孔が存在する証拠となります。地球の熱水噴出孔が生態系を育んでいることから、エンケラドスにも生命が存在する可能性があると考えられています。人類待望の地球外生命体発見の候補地としてエンケラドスにも大きな注目が集まっています。
5月 カナダの大学、ダークマター可視化に成功
質量はあるのにほかの物質と相互作用しない「ダークマター」。わたしたちが観測できる物質だけでは銀河が形を保持する重力が足りないことから、存在が提唱されるようになりました。ダークマターは光を吸収・反射することもないため、直接観測することはできません。カナダのウォータールー大学の研究者たちは、「弱い重力レンズ」を用いてこの謎の物質の可視化に成功しました。重力レンズとは、観測者と星の間にある巨大な重力源によって時空が曲げられ、対象となる星が歪んで見える現象です。研究者たちは膨大な画像を合成し、弱い重力レンズの影響を解析しました。その結果、ダークマターが蜘蛛の巣のような巨大構造を成していることが分かったのです。
6月 LIGO、重力波検出に成功-3度目の快挙
30億年前、はるか彼方の球状星団で衝突した2つの大質量ブラックホール。この衝突・融合によって解放された膨大なエネルギーは、時空を歪めさざ波のように宇宙に広がりました。
この「さざ波」すなわち重力波を、地球のレーザー干渉計重力波観測所(LIGO)が捉えました。地球に届いた重力波は、陽子の直径よりもはるかに小さい空間の歪みを引き起こしました。人間が気付くことはもちろん不可能ですが、高感度のLIGOはこの小さな歪みをとらえたのです。
LIGOは過去2回に渡って重力波を検出しており、今回で3回目の検出成功となりました。LIGOのデータは、謎の物質ダークマターの概念に疑問を投げかけているといいます。今後のさらなる重力波の検出により、この疑問への答えが導き出されるはずです。
7月 ジュノーが木星の大赤斑を至近距離から撮影
木星に接近するジュノー探査機のイメージ図 ImageCredit: NASA/JPL-Caltech
NASAの木星探査機ジュノーが木星の上空わずか9000kmを通過し、大赤班を撮影しました。赤い目玉のような大赤班の正体は、地球が収まってしまうほどの巨大な嵐です。大赤班は数世紀にわたって続いていますが、この150年ほどは縮小する傾向にあるといいます。今回撮影されたような画像は、嵐にエネルギーを供給したり奪ったりする木星内部の力学の解明に役立つことが期待されています。
8月 民間宇宙ロケットMOMO初号機打ち上げ
完成したロケット「MOMO」とインターステラテクノロジズの稲川貴大社長 ImageCredit:時事通信社
民間宇宙ベンチャー企業インターステラテクノロジズが開発した観測ロケット、MOMO初号機が北海道から打ち上げられました。MOMOは全長10メートル、重さ1トンの液体燃料一段式のロケット。人工衛星は搭載せず、先端部の観測機器で高度や位置を確認する予定でした。
濃霧や機体トラブルによる度重なる延期の後打ち上げられたMOMOですが、目標としていた高度100km以上の宇宙空間には到達せず、30~40kmにとどまりました。インターステラテクノロジズの創設者、堀江貴文氏はTwitterで「無事ロケットは離床して飛んで行きましたが、残念ながら宇宙までは到達できませんでした。しかしながら貴重なデータが取れたのでリベンジして宇宙まで飛ばす日も近いです。」と発言しています。
9月 ありがとう、さようなら、カッシーニ
土星を周回するカッシーニのイメージ Image Credit : NASA
2004年に土星探査を開始し、13年にわたって活躍したNASAの土星探査機カッシーニが、2017年9月15日に土星の大気圏に突入し、その任務を終えました。カッシーニは、土星とその衛星の素晴らしい画像の撮影、土星の衛星であるエンケラドスやタイタンの生命可能性に関する大発見など、人類に計り知れない科学的進歩をもたらしてくれました。そんなカッシーニのグランドフィナーレには多くのファンが、感謝と敬意をもってその死を悼んでいました。
10月 月周回衛星「かぐや」が発見した月の地下空洞
月の地下空洞の外観 Image Credit : JAXA
JAXAは月周回衛星「かぐや」から得られたデータから、月の地下数10~100 m付近の深さに地下空洞が存在することを発見しました。地球と異なり大気がほぼない月では、強い宇宙線が降り注ぎます。地下空洞はそのような宇宙線を遮断してくれることから、月に人が住める可能性が高くなりました。少し前まではSFとしてしかみなされなかった月面都市計画が実現するための大きな一歩となった発見でした。
11月 「遠方からの初めての使者」太陽系外の小惑星オウムアムア
オウムアムアのイメージ画像 Image Credit : NASA
NASAが発見した小惑星は葉巻型の奇妙な形状をしており、今まで見たことのない明るさの変化を見せました。この小惑星は私たちの太陽系に太陽系外から速いスピードで接近し、通り過ぎていきます。そのため、ハワイ語で「遠方からの初めての使者」を意味する「オウムアムア」と命名されました。これは太陽系外から接近してくる天体を初めての発見、観測でした。系外惑星の形成についての手がかりを得られるとして天文学者には今後も強く注目されていくでしょう。
12月 日本の金井宣茂宇宙飛行士、ISSへ
2017年12月17日、金井宇宙飛行士が搭乗するソユーズ宇宙船がカザフスタン共和国にあるバイコヌール基地からISSへ向けて出発しました。金井宇宙飛行士はISSに長期滞在する日本人として7人目で、訓練も非常に順調に進んだといいます。宇宙で乳酸菌を摂取することによる免疫向上など、医学実験を予定しているとのことです。ツイッターやブログで毎日のISSをユーモラスに発信されていますね。
以上で終わりです。この他にも様々な宇宙ニュースがありました。来年も楽しみですね!
本年はお世話になりました。来年もTELSTARをよろしくお願いいたします。(TELSTAR一同)