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宇宙食ってなに?~東北大学菜食プロジェクトコラボ~

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1.はじめに

 宇宙食は、宇宙飛行士たちにとってなくてはならないものです。普段とは大きく異なった環境で過ごす彼らにとって、生命維持的にも、ストレス緩和という観点でも大きな役割を担っています。
 この記事では、「菜食から考える宇宙食の未来」をテーマにした東北大学菜食プロジェクト(@veg_tohoku)とのコラボ企画の一環として、そもそも宇宙食とはどのようなものなのかを紹介します。
 本コラボ企画の他のコンテンツには、宇宙食の食レポをおこなった記事や、宇宙食に欠かせないタンパク質の未来を「大豆ミート」「昆虫食」「培養肉」に分け、菜食の視点も加味しつつ考える全3回のポッドキャストがあります。いずれも最後にリンクを掲載するので、ぜひご視聴ください!

2.宇宙食ってなに?

 宇宙食とは、宇宙開発に従事する宇宙飛行士たちが、宇宙船などで食べる食事のことを指します。
 現在おもに食べられているものは、NASAやロシアの宇宙局である国営宇宙公社ロスコスモスが開発し、その機関のもつ工場で生産したものです。それに加え、いわゆる「ボーナス食」という宇宙食も存在します。これはミッションに参加している飛行士の国の機関などが開発した郷土料理の宇宙食や、補給船で届けられた新鮮な野菜や果物など、NASAやロシア宇宙局のもの以外の食事です。中でも、日本のJAXAが選定している民間開発の宇宙食は「宇宙日本食と呼ばれます。日清食品のカップヌードル(日清スペースカップヌードル)やレトルトカレーなど、地上で暮らす私たちに馴染みのある食品が並んでいます。

3.宇宙食に必要なこと

 では、そんな宇宙食に必要なこととはいったいなんでしょうか。「宇宙開発を推進する側」と「宇宙飛行士側」の二つの観点から紹介します。

3.1.コスト削減

 まず第一の観点から。宇宙開発にかぎらず、あらゆる活動は「いかにコストを削減するか」をとても重視します。これは金銭的なものでも、たとえば活動の効率の良さでもありえます。宇宙食におけるコスト削減は、「軽量化」と「保存期間の長期化」を意味することが多いです。重いものを地球の外に運ぶことや、宇宙船までこまめに物資を届けることは、とてもお金がかかるためです。

3.2. 飛行士たちのゆたかな宇宙ライフ

 第二の観点から必要なことには、もちろん「栄養バランス」が挙げられます。真っ先にこれが思い浮かんだ人も多いのではないでしょうか。地球上と大きく異なった環境ですごす宇宙飛行士たちには、健康な身体を維持できるようなバランスのとれた食事が必要になります。とくに、無重量のせいで筋力の衰えが重力下よりも進みやすい環境にいる彼らにとって、タンパク質は筋肉量維持のために非常に重要な栄養素になります。
 また、ストレスの緩和という観点も外せません。食事は地球上に住む私たちにとっても癒やしですが、過酷な環境に身を置く飛行士たちにとってももちろんそうです。そのため、宇宙食の開発では栄養バランスに加えて味やレパートリーにも多大なる関心が払われており、実際に宇宙飛行士たちを交え味や食べやすさなどを確認しながら開発することもあります。

宇宙食の訓練において商業用搭乗員プログラムの宇宙飛行士らと試食を行う野口聡一、星出彰彦両宇宙飛行士 / NASAジョンソン宇宙センター(JSC) / 撮影日:2018年9月11日(日本時間)
©JAXA/NASA

 

3.この企画で考える宇宙食

 今回の企画では、宇宙食のなかでも特に、火星探査などに向かう長期間の宇宙船滞在でのものに焦点をあてています。この宇宙食に特徴的なのは、ISSなどと違い補給船からの物資提供を期待できないことです。そのような状況で、宇宙飛行士たちにとって重要な栄養素であるタンパク質について、菜食の観点をまじえて紹介・議論をしていきます。
 宇宙食の未来を考えるにあたって菜食の観点を取り入れるのには、大きく2つの理由があります。ひとつは、菜食をおこなう人が増えてきている中で、菜食主義者もそうでない人々も、我々がどこにいようと同じように豊かな食事をとることができることが望ましいという理由です。現時点ではNASAの宇宙食にも宇宙日本食にもヴィーガンフレンドリーなものはかなりバリエーションに乏しく、そうでない人々との食事の質に差が生じていることが懸念されます。第二の理由は、資源や資金を多く使う宇宙開発において菜食を取り入れることで、菜食のメリットが宇宙開発にとってもよい方向に作用することが考えられるためです。菜食の基本的な考え方については食レポ記事やポッドキャストをぜひご参照ください。

4.コラボコンテンツの紹介

 最後に、本企画菜食から考える宇宙食の未来』(東北大学菜食プロジェクト×TELSTAR)のコンテンツを改めて紹介します。
 第一弾は食レポ記事宇宙でもおいしいものを食べたい!~東北大学菜食プロジェクト×TELSTARコラボ企画第一弾~です。レトルトカレーやパンやデザートなど、さまざまな製法の宇宙食を実際に食べ、普通の商品との違いなどについて紹介しています。また、菜プロさんの紹介や菜食についての解説などもありますので、ポッドキャストを聴く前にぜひご一読ください!
 第二弾は音声コンテンツです。TELSTARのポッドキャスト番組であるTELSTAR RADIOで配信しています。こちらでは、「大豆ミート」「昆虫食」「培養肉」をテーマにし、栄養・環境・倫理などの観点から、これらの食品の宇宙食としての可能性について菜食の視点もまじえてお話ししています。全3回で、2023年9月下旬より順次公開予定です。

参考文献


ポッドキャスト

※Spotify以外の配信媒体もお選びいただけます。詳しくはこちら(媒体一覧のlinktreeが開きます)

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文責:宇宙広報団体TELSTAR 遠藤ほのか
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