宇宙食について その3:日本の宇宙食って?
2007年以降は、国際宇宙ステーション(国際宇宙ステーション)計画において計画参加国が独自に開発と認証をすることができるようになりました。日本ではJAXAが認証基準の制定と認証作業を行っています。2007年6月には第一回目の認証が行われ、「宇宙日本食」はどのミッションでも供給可能となり、逆に各国のバラエティ豊かな食事も楽しむことができるようになりました。
一般食や特別食として外国人宇宙飛行士にも食されている宇宙日本食には、たこ焼きや赤飯、みそ汁などが挙げられます。変わり種としては、向井千秋宇宙飛行士がSTS-65ミッションに持ち込んだ「菜の花のピリ辛和え」などが挙げられます。
特別食のは国内のみの審査で持ち込みが許可されますが、食品の性質によっては宇宙船打上国に却下される場合もあります。毛利衛宇宙飛行士は納豆を機内に持ち込もうとしましたが、臭いの点はクリアしたものの、糸を引く点が問題となり、NASAによって却下されました。 一方、噛んだ時に粉が飛び散ってしまいそうなせんべいなどは、若田光一宇宙飛行士が特別食として持ち込みの認可を得ており、スペースシャトル内で食べています。
宇宙日本食のコンテストの入賞作品
宇宙食に不適な食品の代表格であったラーメンは、日清食品中央研究所がカップヌードルをベーストした「スペース・ラム」という宇宙用インスタントラーメンを開発したことで持ち込みが許可されました。70℃のお湯で柔らかくなる円筒状の麺の塊が袋の中に3個入っており、これにお湯を注入し、所定の時間を置いてから袋を破って円筒状の麺をフォークや箸ですくって食べます。香辛料を強めに効かせた粘度の高いスープが添付されており、麺にまぶすことでカップヌードルに近い満足感を得ることができます。味付けは、醤油・味噌・豚骨・カレーの4種類が用意されており、野口聡一宇宙飛行士が実際に持ち込みました。加えて日清食品はそばも開発しており、こちらもスペース・ラムと同様に3個の麺の塊を低温のお湯で戻して食します。このかけそば「どん兵衛」と焼き鳥は宇宙日本食として土井隆雄宇宙飛行士が持ち込みました。
それ以外の宇宙日本食としては、おかゆや日本式のカレー、サンマの蒲焼や緑茶などがあります。他国の飛行士にも人気が高いため、野口宇宙飛行士が国際宇宙ステーションに持ち込んだ宇宙日本食を、前任日本人クルーである若田光一宇宙飛行士の置きみやげと勘違いした外国人クルーが喜んで食べてしまうという珍事も起こっています。ただし宇宙食はもともと多めに持ち込まれ、輸送も頻繁に行われているため、ミッションに影響はなかったとのことです。
宇宙で食べれる画期的ラーメン『スペース・ラム』
© 日清食品
スペースシャトルのミッションでは、日本人クルーの好物が栄養維持やリフレッシュ用に特別メニューとして積み込まれました。これらは他国のクルーが消費する分も用意され、コミュニケーションの話題として活躍しています。宇宙日本食には和食以外に日本の家庭料理なども含まれ、下記の様な日本食が持ち込まれました。
毛利衛宇宙飛行士:白飯、赤飯、レトルトカレー、梅干、浮かし餅、羊かん、ほうじ茶、オニオンスープ
向井千秋宇宙飛行士:たこ焼き、肉じゃが、さけの南部焼き、菜の花ピリ辛あえ、五目炊き込みご飯
土井隆雄宇宙飛行士:日の丸弁当、天ぷらそば、焼き鳥、京風あんかけ五目うどん、お稲荷さん、白飯、白かゆ、たまごスープ、レトルト ポークカレー、シーフードラーメン、イワシのトマト煮、お好み焼き、カレーラーメン、しょうゆラーメン、スペースねぎま
若田光一宇宙飛行士:赤飯、山菜おこわ、ラーメン(醤油・シーフード・カレー)、おにぎり、草加せんべい、羊羹、わかめスープ、お吸い物、緑茶、ウーロン茶、トマトケチャップ
野口聡一宇宙飛行士:ラーメン、カレー
星出彰彦宇宙飛行士:お好み焼き、スペースねぎま
若田宇宙飛行士が宇宙に持っていった宇宙食セット
© JAXA
宇宙日本食の開発の波に乗った日本食品科学工学会と大日本印刷は、JAXAと協力して宇宙食用包材に適応したわかめスープを開発しています。このわかめスープは地上と同様の美味しさに加え、天然のミネラル分や食物繊維が豊富であり、宇宙長期滞在下での栄養摂取に大きく貢献します。宇宙食は宇宙飛行士の健康を維持するのに欠かせないアイテムです。無重力による骨量の減少と筋肉の退化を防ぐために、カルシウムとビタミンDが含まれた宇宙食が開発され、放射線による酸化反応の促進を防ぐために、ビタミンCやビタミンEなどの抗酸化成分が含まれた宇宙食が開発されています。
続々と開発される市販の宇宙日本食