流れ星からのメッセージ -日本大学 理工学部 航空宇宙学科 阿部研究室
「おかえりはやぶさ!」の声の主、阿部先生が率いる研究室へ取材してきました。日本大学の阿部研究室では、さまざまな形で地球にふって来る宇宙からのメッセージを読み解いています。
動画:日本中が涙した、はやぶさ帰還の瞬間。この「はやぶさ、おかえりぃー」という声の主こそ、今回お話をうかがった阿部先生 です!
宇宙から降りそそぐ
地球には毎日100〜300トンもの物質が宇宙から降りそそいでいるって知っていましたか?もし降って来る物質が小石くらいだとすると(1個5gくらいだとする)一日に20,000,000個〜60,000,000個くらいが空から降ってくるということになります。実際は小石よりももっともっと小さい0.1mmくらいのチリがほとんどなので、私たちにぶつかる心配はありません。
隕石の故郷を探して
しかし2013年にロシアに落下したような直径20mくらいの小惑星が10数年に一度の割合で落ちてくることもわかりました。隕石火球(隕石は地上に落ちてきた宇宙の物質を表す言葉で、地球に落ちてくる時の発光を隕石火球と呼びます)の軌道を計算すると、どうやって地球にやってきたのか起源を推定することもできます。ですが、まだまだ謎が多く、これからたくさん発見がありそうな分野です。次に世紀の発見をするのは、あなたかもしれませんね。
画像:阿部先生が集めていらっしゃる隕石。このような石が落ちてくるときに隕石火球(流れ星)が観測できます。
宇宙からのメッセージを読みとれ!
メッセージを受け取る手段として、阿部研究室では様々な方法をとっています!
1:観測
みなさんは流れ星に願い事をしたことがありますか? 願い事をするにも速すぎて大変ですよね。そんな流れ星を目で正確に観測して研究することはできません。そこで高感度カメラやレーダーを使って観測します。分光器を使えば流れ星がどんな物質でできているのか、どうして光るのかがわかります。レーダーで観測することで天候や昼夜を問わずに流れ星のメッセージを受け取ることもできます。
画像:観測装置の一つ。市販のビデオカメラに、学生さんたちと作った分光器を装着している
WHAT’S 分光
〜光の色から成分を知る〜
光の色は波長により変化し、物質は成分によって色が変わります。例えば、ナトリウムが発光すると橙色に、マグネシウムが発光すると緑色の光が出ます。一方、太陽光の反射で光っている小惑星は、表面の物質が太陽光の特定の色を吸収します。流れ星や小惑星の表面の色から、どんな物質でその天体ができているのかを調べることができます!光の性質の詳細は、ぜひTELSTAR7号をチェック!!
2:理論
私たちは、いつ・どこで流星群を観ることができるのでしょうか?流れ星を観測をするためにも、天気予報ならぬ流星群予報が存在します。流星群予報には天気予報の天気図のようなものがあるわけではないので、彗星から放出されたチリの軌道を惑星の重力の影響などを考慮して計算することで予測します。
3:探査
小惑星探査機はやぶさから得た小惑星探査データを解析しています。実は阿部先生ははやぶさに搭載していたカメラの開発にも携わっているんです!はやぶさが地球に帰還した際の大気突入映像を見たことがある人も多いのではないでしょうか。燃えつきながら帰って来たはやぶさと地球帰還カプセルも流星に見立てて観測していました。阿部研究室は、現在、はやぶさの後継機である、はやぶさ2のプロジェクトにも関わっていて、2018年からは探査機はやぶさ2が小惑星1999JU3から受け取ったメッセージの解読が始まります。
画像:先生の研究室には、はやぶさ2のステッカーが貼られた望遠鏡や、ポスターがありました!
4:実験
流れ星の発光を詳細に理解する目的で、人工的に流れ星を作る実験を行っています。近い将来、実際に宇宙から流れ星を発生させる人工流れ星衛星を打ち上げる予定で研究と開発を進めています。
ここがポイント
エンジニアリング×サイエンス
航空宇宙工学科は日本大学理工学部の14学科の中のひとつです。阿部研究室で研究されているのは、主に理工学の中の理学の方ですが、工学を忘れているわけではありません。理学の研究を進めるために、じぶんたちでものづくりを行い、その道具を使うことを大切にしています。
阿部先生から高校生にメッセージ
ぜひ物理と数学を勉強して、阿部研究室に入って来てください。一緒に宇宙を目指しましょう!
さいごに
海外の研究者との交流談や一昨年まで居た台湾でのお話など、実はここには書ききれないほどおもしろいお話をたくさん聞かせていただきました。その話はまたいつかの機会にしたいと思います。