2016年の宇宙ニュースを振り返る「宇宙ゆく年くる年」、上半期編に続いて下半期編です。

 

7月 木星探査機「ジュノー」が木星周回軌道に到達
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木星探査機「ジュノー」イメージ図 Image Credit:NASA

2011年に打ち上げられたNASAの木星探査機「ジュノー」が木星の周回軌道に入りました。木星の大気から内部の構造まで、木星を詳細に調べることを目的としています。実は、木星の周回軌道に入ったのは1995年の木星探査機「ガリレオ」以来ということで、久しぶりの軌道上からの探査となります。
現在、ジュノーは太陽電池を使った探査機のうち、地球から最遠の探査機でもあります。日本の探査機は太陽電池を用いているので意外に思うかもしれませんが、NASAのほとんどの太陽系探査機は原子力電池を搭載しているのです。

 

8月 太陽系から最も近い地球型惑星「プロキシマ・ケンタウリb(プロキシマb)」を発見
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惑星「プロキシマb」から見た風景のイメージ図 Image Credit:ESO/M. Kornmesser

ヨーロッパ南天天文台(ESO)の研究チームが、太陽から最も近くにある恒星「プロキシマ・ケンタウリ」を周回する、地球とほぼ同じ大きさの惑星「プロキシマb」を発見したと発表しました。プロキシマbは水が液体として存在できる領域「ハビタブル・ゾーン」内にあるため、生命が居住できる可能性があります。
地球と太陽の距離が約1億5000万kmなのに対し、プロキシマ・ケンタウリとプロキシマbの距離は約700万kmと、非常に近いことが特徴的です。これだけ恒星に近いと放射線などの影響が大きいかもしれませんね。

 

9月 彗星探査機「ロゼッタ」、彗星に衝突してミッションを終了
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彗星探査機「ロゼッタ」イメージ図 Image Credit:ESA/ATG medialab

9月30日、欧州の彗星探査機「ロゼッタ」がチュリモフ・ゲラシメンコ彗星に制御衝突して、約12年半のミッションを終えました。
着陸機の「フィラエ」は2014年にロゼッタから彗星に投下され、世界初の彗星着陸を成し遂げましたが、着陸に失敗してしまい彗星表面上で行方不明になっていました。それから2年が過ぎた2016年9月、行方不明になっていたフィラエをロゼッタが発見したことが大きな注目を集めました。衝突前に見つかって良かったですよね。
フィラエの着陸は失敗したものの、ロゼッタが観測した撮影した画像やデータを元に、彗星の研究が行われます。

 

10月 大西宇宙飛行士、国際宇宙ステーション(ISS)から帰還
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ソユーズ宇宙船から出てきた直後の大西宇宙飛行士 Image Credit:NASA

10月30日、約3ヶ月間ISSに滞在していた大西宇宙飛行士が帰還しました。様々な実験や研究を行い、同月にはISS補給船「シグナス」のキャッチも行いました。
滞在中はGoogle+から毎日、ISSでの仕事を丁寧に伝えて下さり、楽しく読ませて頂きました。その中でも、大西宇宙飛行士があげた帰還前最後の投稿(以下リンク)の、「宇宙飛行士という仕事は、夢を語ることを求められることが多い職業です。でも私の中にはずっと、それに対する違和感がありました」という文章が印象的でした。まだ読まれてない方はぜひ。
https://plus.google.com/101922061219949719231/posts/7ic9eYUg6L1

 

11月 中国が新大型ロケットの打ち上げ、独自の宇宙ステーションの滞在に成功
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中国の新大型ロケット「長征5号」の打ち上げ Image Credit:CALT

ベンチャー企業の動きが盛んになってきた現在、国の宇宙開発で最も盛り上がっているところの一つが、中国です。9月に中国の宇宙ステーション実証機「天宮一号」、10月に2名の宇宙飛行士を乗せた有人宇宙船「神舟十一号」、11月に新大型ロケット「長征五号」と、立て続けに打ち上げを成功させました。また、天宮一号では2名の中国人宇宙飛行士が30日間滞在し、11月、無事に帰還しました。
宇宙探査にも力を入れており、来年には月探査機「嫦娥5号」を打ち上げる予定です。中国の勢いはまだまだ止まらないようですね。

 

12月 日本のISS補給船「こうのとり」打ち上げ成功
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H-ⅡBロケット・こうのとり6号機の打ち上げ Image Credit:JAXA

現在、ISSの補給船はロシアの「プログレス」、米国の「シグナス」「ドラゴン」、そして日本の「こうのとり」と、4機が運用されています。そのうちのプログレスが12月1日に打ち上げられましたが、失敗しました。プログレスは約1年に1回のペースで失敗を続けており、その安全性に不安が残ります。
その約1週間後の9日に打ち上げられた「こうのとり6号機」はH-ⅡBロケットで打ち上げられ、無事に成功しました。こうのとりは打ち上げられた数こそ他と比べると少ない補給船ですが、一度も失敗していないことは大きな日本の強みになっています。

 

下半期編は以上です。
こうして振り返ってみると、宇宙関連の話題は一年中尽きることなく、日々動き続けていることが良くわかります。今回紹介できなかったニュースもまだまだ多くあるので、読んでくださった皆様も印象的だった出来事を振り返ってみてください。
それでは、良いお年を!

(TELSTAR宇宙情報 @telstar_news 管理人 土谷純一)