「宇宙ベンチャーの時代 経営の視点で読む宇宙開発」ー後編ー
┃1.書籍の目次
第一章 宇宙ビジネス概観
第二書 3つの導線
第三章 3つの革新
第四章 宇宙ビジネスの注目8分野
第五章 政府事業から民間商業へ
第六章 スペースXが「宇宙ベンチャーの雄」となりえた理由
第七章 高い株価
第八章 動く日本
第九章 リスクとどう向き合うか
┃2.インタビュー
後編では、書籍を通じて、中高生の方へ届けたいメッセージ、今後発足されるかも知れない、宇宙×経営のコミュニティーについて迫ります。
TELSTAR:
今回の書籍を通じて、中高生の方へどのようなメッセージを伝えたいかを聞かせてください。
小松さん:
僕がすごく思うのは、これからは一人一職業じゃないなと思ってるんです。 僕自身がそうなんですが、ベンチャーキャピタルに所属しながら著作もやらせてもらったりとか、 他の会社の顧問もやってるし、 要するに一人でいくつもの職業を5、6個くらい持ってるみたいな、そういう形になってて。 多分これからの働き方って、 一人一社、それこそ一生みたいな世界って完全に終わっているんじゃないでしょうか。
複数の職種を掛け持ちながら、 そのうち一個が宇宙と関わってるみたいなね。 こういう関わり方も僕は十分ありだと思うんだよね。 それでも十分楽しめたりする。
そういった中で宇宙というものに関わりを生み出してくれるといいんじゃないかなって思っています。
この書籍を通じて、これから求められる、宇宙企業の形、広がる宇宙との関わり方について知っていただければと思います。
誰しも子供の頃に思った職業にダイレクトに就けるって少ないと思います。
子供の頃は見えないものもありますし。別に子供の頃の思ったものにダイレクトにならなきゃいけないとも思わないし、 紆余曲折があってもいいと考えています。
自分の職業ポートフォリオみたいなのを組んで、 そのうち一個は宇宙に関わってるみたいな関わり方ができると良いんじゃないでしょうか。
そういう関わり方をもつ人々の中から、本業として宇宙を選ぶ人が出てくるみたいなのが、僕のイメージの中にはあるんです。
後藤さん:
自分の身の上話をすると、ある意味わかりやすくて、高校生時代にスペースシャトルで毛利さんと向井さんが宇宙に行ったり、H2の初号機が打ち上がったりといったイベントがあり、宇宙の仕事につきたいという単純な好奇心で工学部機械工学科へ進学を決めました。
自宅の近くで宇宙っぽいことをやっている大学に入り、研究室も宇宙系でという希望から、エンジンを研究する研究室に入ってという、ある意味わかりやすい進路選択をしてきたんです。
だけど、今の時代にこの話はあまり参考にならなくて、自分が今学生の立場だったらどうするかな?これまでの話でも出ましたけど、エンジニア以外にも宇宙業界に進むための専門分野の選択肢が広がっていますよね。
小松さん:
文系の僕からすると、理系の基礎を積んでいる後藤さんが羨ましく見える。
今後も宇宙との関わりを考えていくうえでは、理系という選択が王道では有り続けるのかなと僕は考えています。
もちろん、今の中高生の方々が、人生設計をしてその通りになるように努力し続けるのは、僕は大事だと思う。一方で、そこから外れたらおしまいということは全くなくて、沢山の脇道が開けているのが今の世界で、脇道を通っても宇宙に関われる可能性があるから、 宇宙に対してアンテナを高く持っていることがもっとも大事なんじゃないかなと。
その上で自分が、理系・文系どちらを選択するかは、将来何になりたいか、 自分の持って生まれた才能がどっち側の方に近いかという部分で、自分自身と相談して決めていいと思います。その上で、何も決まった道がないということも頭に留めておいていただきたいです。
TELSTAR:
どこかでタイミングでチャンスが降ってくるのであれば、 そこに対応できる柔軟性をちゃんと持っておくことが大事ということですね。
TELSTAR:
中高生の進路決定の悩みの払拭に繋がるご回答ありがとうございます。
最後にもう一つ。
小松さんは、「東京ニュービジネス協議会」へも所属されているというお話が先にも有りましたが、その中で、「宇宙部会(仮)」というものを立ち上げて、将来宇宙産業で企業を目指す学生を募りたいというお話があったかと思います。そのことについてお聞かせ下さい。
小松さん:
東京ニュービジネス協議会には、様々な分野のビジネスをやってる経営者の人たちが所属しています。宇宙ビジネスというものは非常に異質で、実業家、企業を目指す学生双方に学べるものがあると感じています。
また、宇宙ビジネスには、ベンチャービジネスに必要なあらゆる要素が詰まっていて、起業家を育てるうえでよい教材になると考えています。
話の中にあった人材をどう集めるかみたいなこともあるし、お金に関しては、宇宙産業の場合だと10億単位で集めなくちゃいけない。10億というお金を実績もなく一体どうやって集めるんだとか。そもそもマーケットもルールもないみたいな世界で、どのようにマーケットとルールを確立していくんだみたいなことになります。
それらに一人で立ち向かうことは非常に困難です。
参加されるみなさんには、生徒というよりも、経営者と同じ目線をもっていただき、本物の経営者の生のフィードバックを貰いつつ、学習できる場になればと考えています。
宇宙だけじゃなくて宇宙×経営みたいなことで興味をお持ちの方はぜひとも参加して欲しいです。
学生時代は特に面白いことをやらなきゃと強く思います。 社会人になっちゃうとお金はあるけど暇がなくなっちゃう。暇もあって努力次第では多少金もあるっていうのが学生時代だよね。
そこでしこたまいろんな経験積んだほうがいい。 自由な時間を満喫するようなプログラムを提供できるコミュニティみたいなものを作れればと思っています。
┃おわりに
ビジネスと聞くと、物々しく感じる方、また中高生に届けるべき情報でないという方もいるかもしれません。
一方で宇宙開発とビジネスには強い結びつきがあるのも事実です。
この記事を書いている私自身、大学へ進学するまで、宇宙とビジネスの結びつきを知らず、宇宙と関わっていくには、理系の道へ進まなければいけないと考え進路選択をしてきました。
これまでの進路決定に後悔はありませんが、宇宙ビジネス、宇宙と他の分野の関わりをもっと知っていたのならば、選択は変わっていたとも思います。
TELSTARでは、より多くの中高生の方に広い視点でご自身の進路を考えていただき、宇宙との関わり方を見つけていただけるよう、今後も「宇宙×〇〇」をテーマとしたウェブ記事の執筆、広報活動を行って参ります。
改めまして、今回取材にご協力いただいた「宇宙ベンチャーの時代ー経営の視点で読む宇宙開発ー」の著者、小松伸多桂さん 後藤大亮さんに深く感謝申し上げます。
書籍詳細:https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334046538
Amazon URL :https://www.amazon.co.jp/dp/4334046533
取材:千葉俊彦、小山歩 文:千葉俊彦