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うちゅうけん!東北大学天文学教室訪問②~天文学の魅力を教えてください!~

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1. はじめに

 本記事は、宇宙に関わる研究を行う研究室や先生方を紹介するシリーズ「うちゅうけん!」の企画です。
 今回は、東北大学天文学教室の村山卓准教授をたずね、先生ご自身で行われている研究や天文学の魅力について伺いました。前編記事『うちゅうけん!~東北大学理学部天文学教室へようこそ~』では、先生が所属されている東北大学天文学教室について紹介しています。ぜひこちらからご覧ください!

2. 村山先生の現在のご研究について

Q. 先生が現在行われているご研究について、簡単に教えてください。

 観測的な研究を行っていて、銀河を研究対象にしています。銀河の中でも特に、「活動銀河核」について研究しています。

Q. 「活動銀河核」とはどのようなものでしょうか?

 銀河の中には中心部で活発な現象を行っているものがあり、「活動銀河核」と呼ばれます。
 典型的な銀河の大きさは例えば太陽系の属する銀河系(天の川銀河)で直径が10万光年ほどであるのに対し、わずか数光年以下の中心領域から莫大なエネルギーを出しています。どのくらい莫大かというと、銀河全体に恒星は数千億個あると言われますが、それらの星が出す光のエネルギーをすべて合わせたものに匹敵するか、またはそれを超えるエネルギーを放出しているものもあります。
 銀河の中心には、恒星が潰れてできるものよりもはるかに巨大なブラックホールが存在します。円盤状にブラックホールへ吸い込まれていく銀河のガスやちりは、摩擦による熱を生じさせて、強い紫外線を放ち光ります(降着円盤)。ブラックホール自体は光を放ったり反射したりしませんが、この降着円盤を観測することでブラックホールを発見することができます。
 活動銀河核は、私の学生時代には「たくさんある銀河の中でも数%しか活動をしている銀河はない」と言われていた変わり者で、そこに惹かれたのが研究を始めたきっかけでした。今では多くの銀河が活動している(もしくは過去に一度は活動したことがある)といわれるようになり、普遍的な存在になりつつあります。

Q. 活動銀河核について知ると、将来的にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

 天文学に一般的な話として、今すぐ人類の役に立つということはほとんどありません。しかし、私たちがどこから来たのかという大きな問いに答えるためには宇宙の研究は不可欠であり、そこに天文学も貢献できると考えています。
 また活動銀河核に関しては、膨大なエネルギーを放出することで銀河という天体そのものの形成過程にも影響を与えているといわれています。銀河の中心の小さな領域について調べることは、銀河の謎を解き明かすことにつながり、ひいては宇宙全体の歴史や私たちを作る元素がいったいどのようにして生まれたかなどにも繋がっていきます。

3. 研究方法について

Q. 活動銀河核の観測方法について教えてください。

 活動銀河核は遠くにあり非常に小さく見えるため、可視光でその形や構造を直接調べるような観測をすることができません。しかし分光観測を行うことによって、元素の組成やガスの運動状態を調べることができます。
 元素の組成がわかれば、銀河の中心でどのように元素が増えてきたのかがわかり、ひいては銀河全体の中でどのようにして元素が増えていったのかを知ることができます。また、ガスの回転速度がわかると質量を知ることができ、ブラックホールの重さを調べることもできます。

Q. どんな望遠鏡を使って観測データを集めているのでしょうか?

 これまで国立天文台ハワイ観測所の「すばる望遠鏡」をはじめ、国内外の観測施設を利用して可視光や赤外線、電波の観測を行ってきています。大学院生の頃は国立天文台岡山天体物理観測所(2018年にプロジェクト終了)や東京大学木曽観測所、国立天文台野辺山宇宙電波観測所などでお世話になっていました。学生でも本格的な研究施設を利用できる機会を得られたことは研究者を目指す上で貴重な経験となったと思います。
 また、「データを集める」といっても、新たに観測を行うだけではありません。他分野の実験観測とは違って、「観測者が直接手を下して現象を起こすことができない」という天文学の性質上、どうしても「届くデータを待つ」という状態になってしまいます。そうして得られたデータはとても貴重なものになるため、「得られたデータは個人の財産ではなく、世界の共有財産である」という考え方が広まってきています。その考え方から、さまざまな観測所から寄せられたデータがアーカイブという形で公開されています。過去の観測データを「掘り出す」かたちで、新たな研究に役立てることも大切です。

Q. 集めたデータをどのようにして解析するのですか?

 デジタルデータを、コンピュータ上のさまざまなソフトウェアを使って解析します。天文学というと観測のイメージが強いと思いますが、その先の解析にかなりの時間がかかります。時間比でいえば、観測:解析が1:10かそれ以上、という具合です。一期一会で得られたデータなので、試行錯誤をしながら無駄にならないように抽出することが重要です。
 ひとつのデータを解析するだけでなく、膨大な数のデータを処理するような場面もあります。求める解析結果によって新たに解析プログラムを書く必要がある場合もあり、プログラミングスキルも要求されます。ちなみに、解析を行う際の試行錯誤にはある程度の経験も必要なので、学生さんたちには観測だけでなく解析もしっかり行ってもらっています。

Q. 観測的な研究の魅力を教えていただきたいです。

 天文学には大きく分けて理論系と観測系のふたつの系統がありますが、最近はその間の垣根もなくなってきています。その上で観測の魅力を挙げるとすれば、新しい発見をいち早くできることかなと思います。

4. 天文学をはじめたきっかけ

Q. ここからは先生ご自身のことを伺っていきたいと思います。村山先生は、なにがきっかけで天文学を志されたのでしょうか?

 直接的なきっかけはよく覚えていないのですが、小学生の頃から図鑑を見るのが好きで、その中でもとくに宇宙や気象などの地球や宇宙に関するものが好きでした。高校で物理を学んだ時に面白いなと思い、大学進学に際し「物理で宇宙や気象をやりたい」と考えて、天文学のほかにも地球物理学を専攻できる東北大学理学部に進学しました。
 大学で実際に学ぶ中で「直接行くことのできない場所について物理を使って考える」という部分に惹かれて、天文学を専攻することを決めました。地球とは全く異なる宇宙という環境は「物理の実験室」ともいえるので、そこも魅力的に感じています。

5. 中高生へ向けたメッセージ

Q. この記事を読む中高生へむけて、天文学の魅力を伝えていただきたいです!

 宇宙を知ることはどこかで私たち自身を知ることにつながる、ということが魅力だと思います。多くの人が「自分はなぜ存在するのか」や「ちっぽけな存在だからいなくてもいいのではないか」といった漠然とした根本的な問いを持っていると思いますが、宇宙の歴史を知ると、宇宙の存在や私たちの存在がいかに偶然だったかがわかります。そんな宇宙を知ることはどこかで自分の存在意義を探す旅でもあると思っていて、そういうところにも天文学を研究する面白さがあるのではないかと思っています。
 中高生のみなさんには、ご自身のファーストインプレッションを大切にしてもらいたいです。「三つ子の魂百まで」といいますが、出会ったときに強烈なインパクトを受けたものは、ずっと自分の頭の中に残り続けます。人生のうちに出会う強烈なインパクトたちを大切に育てていって、人生を豊かにするものとして使って欲しいと思います。そのひとつが天文学であればとてもうれしいですし、さらには東北大学を進路の選択肢に入れてもらえると、とても幸せに思います。


©TELSTAR

6. おわりに

 本記事は、ウェブサイト「キミだけの宇宙を見つけるポータルサイト うちゅうけん!」を含む一連の企画の記事です。また、『フリーマガジンTELSTAR』のバックナンバーやTELSTARホームページからも過去のうちゅうけん!記事をご覧いただけます。また、各種SNSでも宇宙に関わる研究や学術組織、サークルやイベントなどについての情報を発信していますので、ぜひチェックしてみてください。
 今回は東北大学理学部天文学教室の村山卓准教授をたずね、天文学教室の魅力や村山先生のご研究についてのお話を伺いました。天文学教室を紹介した前編記事はこちらからご覧ください。また、天文学教室に所属する他の先生方のご研究については、天文学教室のホームページをご覧ください。


 

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