はやぶさ2帰還へ③ ~はやぶさ2記者会見(9月2日)~
credit:JAXA
2020年9月2日、JAXAがはやぶさ2についての記者会見を行いました。
内容は、はやぶさ2の現状と12月に予定されているカプセルの帰還についてです。
~過去の記事はこちら~
はやぶさ2のいま
イオンエンジンの運用は一旦停止中。地球に近づいたら、イオンエンジンを再び動かして姿勢の調整をします。
その後は、地球軌道を離脱するまでイオンエンジンの噴射は行いません。
はやぶさ2のあらゆる方向についている化学推進エンジンを用いて、少しづつ姿勢制御を行います。
化学推進エンジンは、燃料と酸化剤を用いてガスを押し出し、その反動で探査機の姿勢を調整するものです。12個のエンジンの組み合わせを変えることで、力を加える向きを制御することができます。
ウーメラ立ち入り制限区域へのカプセル着陸許可発行
8月19日のプレスリリースにおいて、オーストラリア政府からウーメラ立ち入り制限区域への着陸許可を得たと発表されました。
ウーメラ立ち入り制限区域は、初代はやぶさのカプセルが着陸した場所と同じ場所です。
これにより、今年12月6日のカプセル帰還へ大きな一歩を踏み出すことができました。
今後の予定
はやぶさ2の今後の予定はこのような感じです。
「TCM」とは、Trajectory Correction Maneuverの略で、「軌道修正」を意味します。
・TCM-0(9月15日ごろ~)
地球に向かうために、イオンエンジンを使って軌道修正。
これが終われば、地球に帰還するまでのイオンエンジンの運用はすべて終了です。ここから地球までは、化学推進エンジンを使って軌道を調整します。
・TCM-4(12月1日ごろ~)
微調整のあと、ダイナミックに姿勢を変えてカプセルを分離。
分離されたカプセルにはエンジンはないので、そのまま地球に落ちていきます。可能であれば、はやぶさの光学航法カメラ(ONC)を用い、きらきら光る夜の地球に光りながら落ちていくカプセルの撮影にチャレンジする予定です。
・TCM-5(12月5日)
カプセルを分離したあと、猛ダッシュで地球軌道から離脱。地球の重力の手を借りるスイングバイを行って大きく方向転換し、別の天体を目指します。
↓↓帰還の様子を映像で分かりやすく表現したCG動画はこちら↓↓
(クリックすると動画が開きます。音声はなしです。)
hayabusa2_earth_return_j.mp4
はやぶさ2の帰還を見守る方法は?
帰還の際、一般の私たちがリアルタイムで帰還を見守ることはできるのでしょうか。
プロジェクトマネージャーの津田さんによると、「帰還時の映像等を届けることは考えていますが、どのような形式で配信をするかなどの詳細は現時点では未定です。」とした上で、「カプセルが大気圏に突入する前は情報のみを配信できるのが理想であり、オーストラリアから見たカプセル突入の映像については、コロナウイルスの影響で人の移動などに制限がかかるため厳しい可能性もあります。下記に示すような、いくつかの手段(メッセージ募集など)は準備しています。」とのことでした。
また、詳細については「一般の皆様が知りたい情報をどのように発信すれば満たすことができるのか、私たちも模索中です。いいアイデアがあれば教えてもらえれば、できるものはやっていきたい。」と仰っていました。
筆者はとっさにいいアイデアは思いつかなかったのですが、はやぶさ2のファンの一人としては、「リアルタイムでカプセルが”今”どのあたりにあるのか、管制室から見ているように感じ、歴史的瞬間に立ち会えたらいいな」と思っています。
具体的には、カプセルの軌道情報から、コンピューターグラフィックス(CG)などを利用して視覚的にカプセルの様子を見ることができればわかりやすいのではないかと考えます。
ちなみに、初号機の時の映像はこちら。(今回は、はやぶさ初号機のように本体が再突入するわけではないので、カプセルの一筋の光だけになる。)
帰還は深夜なので、リアルタイムで見る方は少ないかもしれませんが、はやぶさ2の帰還をできる限り見届けたいものです。私のようにはやぶさの帰還によって宇宙に引き込まれた方が多いように、今回の帰還も多くの人々の心を動かすことだと思います。
地球帰還を盛り上げるために、すでに予定されている活動は以下の通りです。
・メッセージ募集
・地球帰還時のはやぶさ2の軌道情報の公開
・地球に接近するリュウグウを観測するキャンペーン(※)
・帰還直前のはやぶさ2を観測するキャンペーン(※)
※接近するとはいえ、かなり暗いので大きな望遠鏡を持っていないと厳しいかもしれません
メッセージは現在募集中です。(こちらから)
みんなではやぶさ2を応援し、帰還という一度きりの快挙を楽しみましょう!
そして、カプセルの帰還を見守ったあとは、はやぶさ2が地球に届けたリュウグウのサンプルの解析や、はやぶさ2が他の天体の調査に行く拡張ミッションが始まります。まだまだ、はやぶさ2からは目が離せません。
コロナ下の厳しい状況ではありますが、できる限りの盛り上げをして、はやぶさ2の地球帰還という一大イベントを見届けましょう!
(種田恭子・加治佐匠真)