宇宙で起きた謎の爆発Cow(カウ)に迫ろう!
新しい天体の名前は動物?
みなさんは、Cowという宇宙用語をきいたことはありますか?Cowは、2018年6月16日に、ハワイのATLAS望遠鏡で観測を行っていた天文学者チームが発見した爆発です。これをきっかけに世界中の望遠鏡が一斉にこの爆発に向けられました。Cowは地球から約2億光年の彼方にある小型の渦巻銀河の外縁部で爆発しました。この名称は、日本語で雌牛という意味で名付けられました。
Cowはどこが珍しい?
これまで検出された爆発の中で、Cowは最も地球から近いため、詳細に観測できた点で先例のないものでした。短時間で非常に明るくなった点でも珍しかったです。X線で観測すると、ピーク時のCowは通常の超新星の数十倍も明るいです。一般的な超新星が数週間かかってピークの明るさになるのに対し、Cowはわずか数日でピークの明るさに達しました。
2018年8月17日ハワイのW・M・ケック天文台の分光器DEIMOS(デイモス)が撮影した超新星CowとCGCG 137-068銀河。(©︎PHOTOGRAPHY BY R. MARGUTTI/W.M.KECK OBSERVATORY)
Cowの正体とは?
Cowの正体は研究グループの中で2つの候補が挙げられています。
1つ目は、特殊な超新星爆発(星が最期を迎えて爆発すること)だとする説です。観測した結果、これまでの超新星爆発よりもずっと明るいのです。もし超新星爆発だとすると、ブラックホール、または磁場の強い天体「マグスター」が誕生したと想定されます。
2つ目は、Cowがブラックホールに近づきすぎて破壊された星だとする説です。ところが爆発の場所が銀河の中心から外れていたため、銀河中心に位置する超巨大ブラックホールが星を吸い込んだと考えられないといいます。Cowが密度の高い星間物質で起きたと考えられるものの、大きな星団には通常ガスがほとんど存在しないため、整合性がとれないのです。
AT2018cowの想像図 (©︎ Bill Saxton, NRAO/AUI/NSF Saxton, NRAO/AUI/NSF)
今回の記事のように、Cowはまだまだ謎が多く、未だに発見されていないことが多いです。これからも深く掘り下げていきたいと思います。
[参考文献]
NATIONAL GEOGRAPHIC(星がブラックホールになる瞬間が見えた!? | ナショナルジオグラフィック日本版サイト (nikkeibp.co.jp))
財経新聞(ブラックホール誕生の瞬間を初めて検出か? 謎の爆発現象「AT2018cow」 アルマ望遠鏡 | 財経新聞 (zaikei.co.jp))
WIRED(宇宙で起きた新たな“爆発”が、ブラックホールの秘密を明らかにする | WIRED.jp)
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