医療に貢献する宇宙望遠鏡の技術
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宇宙開発といえば機械系や電気電子系の分野だと思う人が多いかもしれない。だが意外なことにも宇宙開発は医療分野にも貢献している。ここでは宇宙開発と医療が関わっている事例としてジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡の二つを挙げる。
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡×眼科手術
©Northrop Grumman
©日本白内障研究会
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(以後ウェッブと呼ぶ)は遠くにある様々な天体を撮影し、宇宙開発に貢献してきた。しかし、ウェッブが貢献しているのは宇宙開発だけではない。ウェッブに用いられている光学技術は、眼の表面にある角膜を特殊なレーザーで削り、近視や遠視、乱視を矯正する手術の一種であるレーシック手術の向上に役立っている。もともとウェッブは観測する天体を変えるごとに望遠鏡の鏡を適切な形状に変形する必要がある。その変形手順が角膜の形状を測定する技術に応用されている。この技術は2022年7月8日までに1,800万件のレーシック手術で活躍した。
ハッブル宇宙望遠鏡×マンモグラフィー
©NASA
©yuasacl.com
ジェームズ・ウェッブ望遠鏡より昔に打ち上げられたハッブル望遠鏡で得られた技術は乳がん検査の負担を軽くしている。マンモグラフィーとは乳がんのX線検査のことである。ハッブル宇宙望遠鏡(以後ハッブルと呼ぶ)には、CCD(電荷結合デバイス)が搭載されている。CCDとは、人間の目の網膜のように機能する光感知チップであり、入ってくる光エネルギーを電気信号に変換する役割を持っている。CCDそのものはハッブルで開発されたものではないが性能向上により、乳がん検査において体を傷つけることなく乳がんの有無を調べることが可能になった。さらに、ハッブルのデジタル画像からぼやけを消去するためのコンピューター画像処理と強化技術の開発が医療のX線画像をより見やすくしている。ハッブルはCCDに宇宙線が衝突すると画像に小さな光点が生じてしまう問題がある。その小さな光点を特定して画像から消去するソフトは、乳がんの初期兆候である微小石灰化を発見するソフトとして役立っている。
まとめ
このように宇宙望遠鏡の仕組みを医療に昇華する試みが為されており、ハッブル、ウェッブの次なる宇宙望遠鏡にも是非期待したい。ここでは宇宙望遠鏡だけを取り扱ったが今後人間が宇宙で暮らしていくためには医療の発展が不可欠である。宇宙と医療は互いに協力関係にあると言えるだろう。
THE BALTIMORE SUN Hubble X-rays aid health Technology: Space Telescope contributes to making breast exams easier.
https://www.baltimoresun.com/news/bs-xpm-1997-02-11-1997042113-story.html
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